「降誕の正面」は聖堂の側面の壁の一部にすぎない

 ここまでは筆者も知っていたのだが、恥ずかしながら、筆者はずっと、「降誕の正面」が教会の正面入り口なのだと思っていた。「正面(ファサード)」と呼ぶくらいだから、そう思うではないか。全体が塔と彫刻だらけの建築なので、写真や模型で見ても、どこが何なのかよくわからない。

 行ってみて衝撃を受けたのは、「降誕の正面」は聖堂の側面(北東側)の壁の一部だということ。出入口はあるが、「祭壇と正対する」という意味での「正面入り口」ではない。

 普通の建築家なら礼拝のための箱を先につくって外部装飾を後からつくるか、外部装飾からつくるにしても正面入り口からつくるだろう。ガウディは後回しでもよさそうな側面の一部を最初につくり始め、それでも人々の心をとらえる自信があったのだ。「この先、面白い部分がまだまだ続くよ」と。

地下の展示室に飾られていた写真。ガウディの晩年の建設風景。「降誕の正面」の最初の1本が完成した翌年の1925年、ガウディは路面電車にはねられて亡くなる。享年73

 ガウディの死後も浮き沈みはあるものの献金は集まり続け(2000年代に入ると観光収入が急増)、「身廊」や「受難の正面」「マリアの塔」が完成。今日に至る。

「受難の正面」(南西側側面)
聖堂の内観。身廊から祭壇方向を見る
祭壇の裏手(北西側)の外観。中央の塔が2番目に高い「マリアの塔」(138m)。2021年12月に完成した

 残るは、最も高い「イエス・キリストの塔」などだ。イエス・キリストの塔は高さ172.5mとなる。