今は小康状態にあると思ったら、大きな間違いである。韓国での「福島汚染水」騒動は一向に収まる気配がない。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水を海洋に放出する計画を巡り、5月21日から6日間の日程で韓国から視察団が派遣された。視察団の派遣については韓国内で議論が巻き起こっているといった認識が日本でもあるようだが、それは議論などと言えるものではない。私がここであえて、「騒動」と書いているのはそのためだ。
全日程を終えて26日に帰国した視察団を待ち受けていたのは、最大野党である「共に民主党」から浴びせられる批判である。
その日、まだ視察団が帰国の途にもついていない午前中に、党幹部20人がソウル市中心部の光化門に集結していた。李舜臣(イ・スンシン)将軍の銅像前に並び、「福島原発汚染水の海洋投棄および水産物輸入反対の国民署名運動発起式」と称するセレモニーを執り行っていたのだ。李舜臣将軍は文禄・慶長の役で日本軍を撃退して戦死した韓国の英雄である。そうした場所でセレモニーを開催していることからして、日本批判であることは明確だ。
その中央には共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の姿があった。「政府視察団が汚染水の安全性を確認することになれば、結局は危険性がないということを間接的に認めることになり、福島近郊の海域から水揚げされた水産物の輸入禁止措置の根拠を失いかねない」と訴えていた。
つまり、原発処理水の海洋放出についてどの程度安全であるかどうかを確認することすらナンセンスというのだ。しかもこのシュプレヒコールが挙がったのは、視察結果の発表前であることに留意していただきたい。結局は、処理水放出の問題を政局の材料にしているのだ。まるで科学的根拠など関係ないとでもいうように、視察団を派遣した尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権と与党を批判している。
それにしても、どうしてこれほどまでの批判が起きるのだろうか。