訪韓して尹錫悦大統領と会談した岸田文雄首相(5月7日、写真:ロイター/アフロ)

 岸田文雄首相が5月7日から1泊で韓国を訪問し、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会談した。

 首相が訪韓して首脳会談に臨んだのは実に12年振りである。

 日本に最も近い国であり、自由と民主主義を標榜する隣国でありながらこれほど長い期間、正式の首脳会談が開かれなかったということは、いかに対応が難しい国であるかという証左である。

 尹錫悦大統領は就任以来、日韓関係の修復に精力的に取り組んできた。

 その一つが徴用工問題である。前政権下で悪化する一方であった問題が進展したことは間違いない。

 両国首脳が尹錫悦大統領の就任以来あらゆる機会をとらえて対面会談を重ねているのはこうした関係改善を受けてのことである。

 しかし、両国間には竹島問題や慰安婦問題が依然として残されている。また、射撃レーダーの照射問題や旭日旗問題などもあり、解決されないまま現在に至っている。

 歴代の親日政権は終盤に向かいレームダック化して支持率が低下すると反日に転ずることがしばしばであった。

 韓国の政治において反日は支持率向上の妙薬として機能してきたのであり、今後も政治家や民間団体などでは有効なカードとして温存され続けるに違いない。

あまりにも短兵急の韓国接近

 尹錫悦氏は大統領候補になった時から対日関係の転換を言明していたので親日政策をとることは予測されていた。

 そして、当選直後から徴用工問題の解決に注力してきた。現実に解決策を提示し、反対してきた人々の大半の説得にも成功した。

 徴用工問題が日韓関係に決定的な亀裂をもたらしたわけで、その解決にまず努力したことは評価される。

 しかし、長年にわたり、ありもしなかった慰安婦問題を世界に喧伝し、いまなお在韓日本大使館前に違法に設置された少女像は撤去されず、日本の名誉と尊厳を踏み躙り続けている。

 このほかにも、対日関係の悪化に拍車をかけた旭日旗への言い掛かりや射撃レーダー照射問題などが何一つ解決されていない。