マーヴィン・ゲイ(1974年) 写真/REX/アフロ

(小林偉:大学教授・放送作家)

環境破壊・汚染の問題を声高に唱えた音楽人

 5月19日からの3日間、広島で開催される主要先進7か国首脳会議(G7サミット)。開催地は原則持ち回りとなっているため、日本での開催は7年ぶりとなります。

 その重要議題の一つが、環境問題。二酸化炭素の排出等による環境破壊の影響で急激に進行している地球温暖化への歯止めなど、もう随分前から議論されている問題の解決へは、未だ有効策を打ち出すには至っていないのが、悲しいかな現状です。

 そもそも、この環境破壊・汚染の問題は、世界的に近代化が進んだ19世紀終わり頃から顕在化し、“公害問題”として様々な人的・物的被害も出してきました。特に1970年代に入ってからは、世界の至る所で深刻化。それに対して、多くの人々から警鐘が鳴らされています。中でも声高に唱えていたのが、欧米の音楽人たち。そこで今回は、環境問題を訴えた曲を幾つかご紹介したいと思います。まずはこちらから。

●BIG YELLOW TAXI/JONI MITCHELL

  カナダを代表するシンガー・ソングライターのジョニ・ミッチェルが、1970年にリリースした「ビッグ・イエロー・タクシー」という曲です。

 当時、初めてハワイを訪れた彼女が、ホテルの窓から緑豊かな景色に心を奪われたのも束の間、すぐ下には、大きな駐車場が広がっているのを見て、環境破壊が進んでいる現状に悲しくなり、最初のフレーズである「彼らは楽園を舗装して、駐車場を作った」・・・が思い浮かんだそうです。

 そしてコーラス部分では「自分が持っていたものは、失くすまで、どんなに大切か気づかない」と歌われ、最後は「夜、ドアが閉まる音が聞こえた。大きな黄色いタクシーが私の愛しい人を連れて行ってしまった」と締められています。

 かつてカナダのパトカーは、大きな黄色い車体で、主にセレブが使っていたようで、ビッグ・イエロー・タクシーは、体制側の象徴のように使われているみたいですね。要するに「偉い人たちは、私たちから大切なモノ(自然や環境)をかすめ取っていく」というようなニュアンス。ここはさすが、ボブ・ディランと並ぶ詩人とも言われる彼女ならではの表現という感じですね。

 この曲は、そんな環境問題を暗喩的に取り上げた歌詞と、軽快な曲調から大ヒット。以後、数多くのアーティストにカバーされ続けています。

 続いては、この翌年にリリースされたこちらの曲。