マット安川 日本が持っていた大事なものが失われた、と今回のゲスト・藤木幸夫さん。信義や恩義が骨抜きになり、資本主義やグローバリズムを追いすぎていると、戦後の復興話などをからめながら静かに抱く危機感を語っていただきました。

風評被害の元凶は首相官邸。私は怒っている!

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:藤木幸夫/前田せいめい撮影藤木 幸夫(ふじき・ゆきお)氏
横浜港運協会会長、藤木企業株式会社 代表取締役会長。 実業家として港湾産業の近代化に取り組み、また長く日本の港湾行政に携わる。(撮影:前田せいめい、以下同)

藤木 今回の大震災で被災地の方々はとても大きな精神的ダメージを受けています。いまだに家族が見つからない、遺体は見つかったけれど火葬する手段がない・・・。

 被災した友人をはじめ、各方面から聞こえてくるそうした声を思うと、軽々しく「東北がんばれ」などと言う気になれません。彼らは悲しみに打ちひしがれながら、とうに頑張ってるんですから。

 もちろん物理的な復興も大事ですが、やたらと背中を押すのは考えものだと思います。少なくとも3カ月くらいは、彼らの心の傷が癒えるのを静かに見守ってあげた方がいいでしょう。

 一方で私が今、本気で憤っているのは放射能汚染をめぐる風評被害についてです。私が関わる横浜港も、福島や茨城の生産者の方々と同様、今まさに風評と戦っています。

 多くの国の船が放射能を恐れて、横浜など日本の港を避けている。福島沖は怖いからと、苫小牧(北海道)から清水(静岡)に行くのにわざわざ日本海を回る船もあったりします。

 横浜港ではすべてのコンテナの放射線量を測定してデータを公表するなど、風評による誤解を解くために頑張っています。一度は逃げ出したドイツなどの船が戻ってきているのは、役所も民間も関係なしに、みんなが一体となって奮闘した結果です。

 そもそもいい加減な風評が世界中に広まったのはなぜか? 私の怒りが収まらないのは、その源を辿ると首相官邸に行き着くということです。彼らがポロッとしゃべったことが一人歩きした結果、大勢の人たちが苦しんでいる。こんなことが許されますか?