同財団の研究と提言は、ワシントンでの中国論議でも最も尖鋭かつ具体的と言える。しかも近年の米国での中国観の大きな変化に重大な役割を果たしたマイケル・ピルズベリー氏の提言が、このヘリテージ財団の最新の中国対策には盛り込まれているのだ。ピルズベリー氏は米国における中国研究の大御所で、日本でも著書『China 2049』が2015年に出版されて大きな話題を呼んだ。
ヘリテージ財団ではこの3月末に「新冷静に勝つ・中国に反撃する計画」と題する長文の報告書を発表した。その内容はいまや米国を圧し、世界を制そうとする中国との闘争を新冷戦と定義づけ、米国の官民はその戦いに勝つために何をすればよいのかを具体的に述べていた。合計140ページほどの報告書は48項目の具体的な提案を明示していた。これらの案を、米国の政府や地方自治体、あるいは軍隊の実際の戦略や対策として打ち出すことを勧告していた。
報告書の冒頭ではヘリテージ財団のケビン・ロバーツ所長が、今回の新冷戦では中国はかつての主敵のソ連よりも手ごわい敵であるとして、その理由を2つ挙げていた。
第1は、かつての東西冷戦では米国はソ連に対抗しようと決意した多数の同盟諸国、同志諸国との堅固な国際連帯を保持していたのに対して、今回は米国寄り勢力でも中国への向き合い方が異なり、かつてのような国際連帯が存在しない点である。
第2は、かつての冷戦では米国とその同盟諸国はソ連を経済的に切り離し、経済面での圧力をかけることができたのに対して、今回は経済面で中国に依存し協力する諸国も多く、中国を孤立させることが難しい点である。