(写真:AP/アフロ)

 米アップルもついに人員削減に着手すると、米ブルームバーグ通信ロイター通信が4月3日に報じた。ただし、その規模は他の米テクノロジー大手に比べて小さいものになるという。

アップルにとって新たな一歩

 他のテクノロジー企業は、2022年から23年初めにかけて創業以来最大の人員削減に踏み切った。だが、アップルは新型コロナ下でも人員を急拡大しなかったため、大規模な人員削減は免れたという。

 アップルの削減対象人数は他社に比べて少ないものの、この動きは時価総額世界トップの企業にとって新たな一歩を示しているとブルームバーグは報じている。

 アップルはこれまで、契約エンジニアや採用担当者、警備員といった請負業者を大幅削減するなど、コストカットを実施してきたが、従業員のレイオフ(一時解雇)はほとんど行っていない。同社は以前、自動運転開発部門で数百人を解雇したことがあるが、それは新型コロナ以前のことだった。

 ブルームバーグによると、今回削減の対象となるのは、小売り部門のオフィス勤務従業員。その中の開発・管理チームから削減していく。このチームは直営店「Apple Store」などの施設の開設と保守を担当しており、その範囲は全世界に及ぶという。

位置付けは「経営合理化」

 アップルはこの動きを単なるレイオフ(一時解雇)ではなく、経営の合理化と位置付けている。例えば削減対象の従業員にこれまでと同様の職務に再応募できる機会を与える。応募せずに会社を去る人には、最大で4カ月分の給与を支給する。

 また、一部の管理職は廃止される。それらの人は一般社員として再雇用される可能性があるが、以前と同じ報酬を得られるかどうかは分からないと事情に詳しい関係者は話している。また、一部の従業員は免除され、再応募することなく同じ職に就くことができるという。

人員増加率は年5~7%、他社より低く

 22年後半から米テクノロジー大手の大規模な人員削減が相次いでいる。米国を中心とするテック企業のリストラ情報を集計するLayoffs.fyiによると、23年1~3月に削減対象となった人数は約16万6000人。22年は1年間で約16万4000人だった。

 23年はいかに速いペースでリストラが進んでいるかが分かる。米テック大手は新型コロナ下の特需で2年半にわたり業績を伸ばし採用を拡大してきた。例えば米アマゾン・ドット・コムは22年までの2年間で従業員数を2倍に増やした。だが、日常を取り戻した22年後半ごろから成長が鈍化し、軌道修正を余儀なくされた。

 一方、アップルの22年9月末時点の従業員数は16万4000人で、前年比6.5%の増加にとどまる。同社の従業員数伸び率は新型コロナの感染拡大が始まった20年以降毎年約5~7%で推移しており、19年以前の伸び率約4~7%とほぼ同じだ。

 アップルは他のテック大手と異なり、新型コロナ下でも労働力を急速に拡大することはしなかった。そのため、大規模なレイオフの必要はなく、他社のような対策は取らなかったとブルームバーグは報じている。