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昨年11月の米中首脳会談では双方とも笑顔を見せたが、その裏ではすでに熾烈な情報工作戦が始まっている(写真:ロイター/アフロ)

(文:春名幹男)

米国は強力な情報力を駆使し、4カ月前にはロシアのウクライナ侵攻を把握し、その後も様々な手を打っている。この教訓が、「台湾有事」でどう生かされるのか。米中の情報戦はすでに始まっている。

「台湾有事」はいつ起きるのか。米国から、やれ2025年だの2027年だの、と根拠が薄い説も多々伝えられている。日本メディアはこれらを評価もせずに報道するため、読者は惑わされる。次の3説はそんな類の愚説と言えるだろう。

 第1は2021年3月、フィリップ・デビッドソン米インド太平洋軍司令官(当時)が議会証言で示した「2027年説」。実は司令官は、ジョー・バイデン政権がインド太平洋地域で爆撃機17機、戦闘艦艇15隻の削減を決めたことに反発し、危機を煽り予算を復活させることを狙った発言だと言われている。

 第2に昨年10月、マイク・ギルディ海軍作戦部長はシンクタンクでの講演で、「私の心の中では2022年も2023年も排除できない」と述べた。2022年末まで2カ月余の時点での無責任な発言で、偶発的衝突に警告したようだ。

 第3は今年2月1日付で、マイク・ミニハン米空軍航空機動軍司令官がスタッフ宛のメモで出した「2025年説」。2024年の米大統領選挙と台湾総統選挙を根拠にしている。しかし次の台湾総統に中国側が望む国民党候補が当選すれば、「台湾独立」が遠のき、有事への不安は後退する。

 確かに習近平国家主席は中国共産党大会で、台湾統一は「実現できる」と豪語し、「武力行使の放棄を約束しない」と言明した。

 だが実は、米軍人トップは台湾侵攻の軍事作戦は困難を伴うと明言している。侵攻すれば必ず西側の制裁を受ける。さらにウクライナ侵攻のように米国の情報工作で作戦情報が漏れると、裏をかかれて失敗する。

 信頼できる米軍トップの見解や米インテリジェンス・コミュニティ(IC)の見方を基に、「台湾有事」をめぐる問題点を分析する。

台湾侵攻は「プーチンの失敗と同じになるだろう」

 米軍のトップ、マーク・ミリー米統合参謀本部議長もロイド・オースティン国防長官も、現実には、極めてリアルで穏健な見解を示していて、「台湾有事は差し迫ってはいない」と熱を冷ます見解を表明している。

 特に、ミリー議長が昨年11月16日の記者会見で明らかにした困難な軍事作戦の現実は、専門家の間でも高く評価された。

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