オースティン国防長官が取締役だったレイセオンが製造している地対空ミサイル「スティンガー」(米陸軍のサイトより)

 軍産複合体――。

 この言葉を耳にして、読者の皆さまはどういったイメージを抱かれるだろうか。

 1961年に米国のドワイト・アイゼンハワー大統領が退任演説でこの言葉を使った後、軍需産業と政府が経済的、政治的、軍事的に結託した連合体を形成していることがクローズアップされた。

 その後、様々な角度から軍産複合体が研究され、政府が軍需産業と手を組むことで予期せぬ波及効果や受益者が生み出されていることが分かり、それは現在まで連綿と続いている。

 近年では、米ロイド・オースティン国防長官が2021年1月にバイデン政権の国防長官に就任以来、特定の軍需企業に多額の政府契約を発注していることが判明している。

 その軍需企業というのは防衛・航空宇宙機器メーカーのレイセオン・テクノロジーズ社(以下レイセオン)である。

 同社は米東海岸のマサチューセッツ州に本社をおく多国籍企業で、航空機エンジンからミサイル、防衛システム、無人航空機などを製造する巨大軍需企業だ。

 2022年の売上高は約670億ドル(約8兆8000億円)で、ロッキードマーティンやノースロップ・グラマンとならぶ業界トップクラスの企業である。

 オースティン長官はジョー・バイデン大統領に防衛長官の打診を受けるまで、同社の取締役を務めていた。

 いま問題視されているのは、同氏が長官になっても、軍需産業と関係が切れていないのではないかという疑念だ。