2022年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は2四半期ぶりのプラスとなった。だが、成長率はごくわずかであり、限りなくゼロ成長に近い。2022年後半は物価上昇の影響が深刻になった時期であり、インフレが消費低迷に影響した可能性は高い。日銀の金融政策の転換で金利が上昇するリスクもあり、楽観視できない状況といってよいだろう。(加谷 珪一:経済評論家)
設備投資と在庫がマイナスになった理由
内閣府は2022年2月14日、10~12月期のGDP速報値を発表した。物価の影響を考慮した実質成長率(季節調整済み)は0.2%(年率換算で0.6%)と予想を大きく下回った。7~9月期はマイナス0.3%だったので、プラス転換ではあるものの、限りなくゼロ成長に近く、景気が回復しているとは言い難い状況だ。
もっともGDPにおける最大の支出項目である個人消費の水準は、プラス0.5%とそれほど悪くなかった。旅行支援などの効果もあり、消費はそれなりに伸びたが、物価上昇の影響が大きく、実質のプラス幅は伸び悩んだ格好だ。加えて、GDPの統計上は輸出に計上されるインバウンドが部分的に復活したことも、GDP全体の増加に寄与している。
では、個人消費がそこそこの水準だったにもかかわらず、全体の成長率はなぜ低かったのだろうか。それは企業の設備投資が減ったことと、企業の在庫変動が大きかったからである。この2つのファクターは、様々な解釈が可能ではあるものの、企業が経済の先行きを悲観した結果だとすると、状況は良くない。