「ドイツはいまロシアと戦争状態にある」
この発言がいま欧米の外交関係者だけでなく、メディアでもしきりに取り上げられている。
「本当の戦争状態ではないだろう」「誇張なのではないか」「これから戦争はさらに拡大していくはず」といった賛否両論が巻き起こっている。
発言者が軍事評論家や一般人であれば軽視されることもあるが、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相の言葉であるだけに無視するわけにもいかない。
しかも私的な談話などではなく、1月25日に行われた欧州評議会(PACE)での発言だけに問題は拡大した。
同外相はさらに「大事なことは欧州諸国の間で非難し合わないことであり、ウクライナを守るためにもっと努力すべきということ」とつけ加えて、ウクライナ擁護と同時にロシアへの対抗姿勢をより鮮明にした。
同外相が「戦争状態にある」と発言した背景には、ドイツと米国が1月25日、ウクライナにドイツの第3世代主力戦車「レオパルト2」を14両、米国は「エイブラムス」戦車31両の計45両を供与すると発表したことがあった。
これまで西側諸国の政府高官たちはロシアとの紛争に直接関与する姿勢をとってこなかった。
というのも、ロシアによるウクライナ侵攻が人道的にも政治的にも非道な行為であると認識していても、ウクライナ紛争に直接関わることから生じる危険性を危惧し、ロシアに敵対行動をとってこなかったからだ。
だがいま、ベアボック外相がロシアに対して率直な意見を述べたことで、欧米諸国ではドイツがロシアに「宣戦布告」したとも受け止められている。
今回の同外相による発言は、これまでのドイツ政府の対応と「真逆」と述べて差し支えない。