菅前首相の決起しかない

 自民党の所属議員数は衆参で380人。現在の勢力図は、岸田派(43人、第5派閥)、茂木派(54人、第2派閥)、麻生派(50人、第3派閥)の3派が主流の立場にある。単純計算で147人となる。

 これに対し、「防衛増税」等で岸田首相に反発する声が目立つ安倍派(97人、第1派閥)と、反主流派色を明確にしている二階派(44人、第4派閥)、森山派(7人、第6派閥)の2派を合わせると、単純計算で148人となる。まさに互角の構図といっていい。

 必然的にこの局面を動かすのは、残る85人の無派閥議員となる。彼らを味方につけたほうが政局的には勝利する。菅氏はこの85人に最も強い影響力を持っており、いわゆる「菅グループ」は衆院15人、参院10人の計約25人はいるとされている。

 菅氏は二階氏と緊密に連携しており、安倍派が担げる人物でもある。この25人が安倍、二階、森山の3派と足並みをそろえれば計173人。自民党で過半数を制するには191人必要で、数でいえば足りない。ただ、残りの60人のうち18人を取り込めばいい計算になるので、それほど難しくはない。「数の力」でみると、安倍派、二階派、森山派、菅グループが手を結べば、主流3派に勝てるというのが現実だ。

 果たしてどの時点で菅氏が動くのだろうか。今年の政局は菅氏の決断にかかっているといっていい。菅氏はもちろん、簡単には動かないだろうが、「防衛増税」に関しては説明不足との見解を持っており、利上げを含む日銀の金融政策の変更、すなわちアベノミクスとの決別についても批判的な立場を取る。最大派閥の安倍派は、今なお分裂含みだが、「防衛増税」への抵抗感が強い。菅氏が決起すれば、安倍派は菅氏と行動を共にするだろう。

 菅氏が動かなければ、岸田政権は2024年9月の総裁任期満了まで続くかもしれない。さすがにそれはないだろうというのが常識的な見立てだが、菅氏が静観を貫き、岸田首相が解散を打たなければ十分あり得る。

 前首相が決起するか否か。現下の政局はひとりの人物の決断に委ねられている。