ゼロコロナ政策の終了で増える秘密

 中国では一般に、感染症(種類を問わない)による死者が実際よりも少なく数えられている。これは単に、病院が貧弱で一部の病気の検査ができない場合があるからでもある。

 また、米セントルイス・ワシントン大学に籍を置く病理学者のマイ・ハー氏によれば、中国では社会の安定を脅かす感染症は国家安全保障にかかわる問題だと見なされるという。

 死者の数え方も一定の役割を果たす。

 人が死ぬときはいくつもの要因が重なっていることが少なくなく、中国の医師の間では、心臓病のような慢性疾患を死亡診断書に記すのが普通だ。

 中国では通常、季節性インフルエンザによる死亡者数が年あたり数十人と報告される。信頼できる複数の研究によれば、実際の死亡者数は年10万人に上る。

 統計を操作することが可能だとしても、ゼロコロナ政策解除後に感染者数が急増する「出口波」で大量の死者が出れば、隠すのは難しい。

 病院がパンクしたり、自治体がパニックに陥ったりすれば、スマートフォンで撮られた動画が検閲当局の努力もむなしくインターネットで拡散されるからだ。

 制限解除後の準備を怠った中国共産党が今後、長らく制限されていた自由が回復されたのは党のおかげだと主張すると思っておくといい。

 中国国民の中には、政府からのメッセージの突然の変化をそのまま受け入れる人もいるだろう。

 一方で、防ぐことのできる死を回避するのが真のリーダーシップのしるしだと、2年半にわたって聞かされてきたことを忘れない国民もいるかもしれない。

 中国共産党は、勝つことのできない戦争において早まった勝利宣言をした。そのツケは国民が払うことになる。