プロパガンダは奏功したが・・・

 西側に辛辣な言葉を投げつけた華氏はナショナリストから歓迎されている。

 だが、中国はパンデミックが始まって以来ずっとプロパガンダの手段を総動員し、あまりに退廃的で命という基本的な人権を守ることができない国々として民主主義国を描いてきた。

 華氏がツイートしたその日も、夜のテレビニュース番組「新聞聯播」は、パンデミックになってから何度となく放送してきた米国の窮状のイメージ画像を改めて電波に乗せた。

 救急車が病院に到着し、人工呼吸器を付けられた患者が運ばれていく動画だ。

 番組のキャスターは米国の新型コロナによる犠牲者の最新の値を読み上げ、米国内の病院ではインフルエンザの患者も急増していると説明した。

 プロパガンダは効く。

 11月後半のある日、北京の町を散歩していた白髪混じりの男性は、珍しいことに抗議行動の現場に出くわした。

 ろうそくに火を灯し、パンデミックに伴うロックダウン(都市封鎖)の犠牲者――火事になったアパートの非常口がふさがれていたために逃げ出せなかったと伝えられる家族や、病院で救急医療を断られた子供など――の死を悼む集会だったが、男性は参加していた若者たちをしかりつけた。

 そして外国人記者たちの存在に気づくと、腹立たしそうに筆者に話しかけてきた。

 中国が悲しまなくちゃいけないものなんかあるのかね。教えてくれ、米国はコロナで何人死んだのか。中国は何人だ――と。

いきなり変わるメッセージ

 これら2つの数字――米国ではパンデミックで100万人を超える人が死亡したのに対し、中国の犠牲者は公式的には5235人――は政治的な象徴であり、多くの中国国民が問われもせずに口に出すものだ。

 ということは、適切な準備をせずにゼロコロナ政策を解除する中国当局には、新しいメッセージが必要になる。

 当局は突然、新しいオミクロン株の症状が軽いことを強調し始めた。あたかも、ようやくもぎ取った勝利の後のウイニングランを楽しむかのような口ぶりだ。

 しかし、これではオミクロン株が脆弱な人々に、特にワクチン接種が不十分な高齢者(中国には大勢いる)に突き付ける危険性を無視することになる。

 この危ない時期を中国共産党はいかにして乗り切るのか。