写真/アフロ

(小林偉:放送作家・大学講師)

定番のクリスマスソングが流れる季節

 毎年、11月の下旬頃から街中はクリスマスに向けた煌びやかな装飾となり、デパートでも商店街でもコンビニでもどこでも、クリスマス・ソングがヘヴィ・ローテーションとなりますよね。

 その“定番”は、山下達郎の『クリスマス・イヴ』をはじめ、ワム!の『ラスト・クリスマス』、マライア・キャリーの『恋人たちのクリスマス』、back numberの『クリスマスソング』、松任谷由実の『恋人がサンタクロース』、B’zの『いつかのメリークリスマス』、そしてビング・クロスビーの『ホワイト・クリスマス』辺りでしょうかね。この時期に街へ出たら、上掲の曲から逃れる方が難しいくらいです(苦笑)。

 そもそもイエス・キリストの生誕を祝うクリスマス・ソングというのは、遥か昔から賛美歌などの形で存在しています。それに加えて、特にヨーロッパなどでは12月25日は冬の季節ですから、例えば『ジングル・ベル』のような、民衆たちが冬の楽しさを歌った歌もクリスマス・ソングの範疇に括られていますし、家族や恋人への愛を確かめるツールとして、また賑わいを見せる中で感じる孤独や、一抹の淋しさを歌ったクリスマス・ソングというのも、それ以上に数多くありますからね。その総数たるや、正に天文学的数字となるでしょう。

 さて今回は、そんなクリスマス・ソングを特集しようと思うのですが、普通のものを取り上げても芸がないので、こんなテーマを掲げてみます。

「恐らく街中では絶対聴くことがないであろう、クリスマス・ソング特集」。

 早速、1曲目はこちら。

●LE NOEL DE LA RUE/EDITH PIAF

 こちらを歌っているのは、シャンソンの代名詞的存在であり、フランスを代表する歌手だったエディット・ピアフ。原題は「ル・ノエル・ド・ラ・ルウ」・・・直訳すると「通りのクリスマス」ということで、邦題は「街のクリスマス」となっています。

 リリースされたのは1952年。イントロにはクリスマスっぽさが多少ありますが、全体的には全然クリスマスっぽくないですね。

 歌詞を訳してみると・・・「坊や、どこへ行くの? 裸足でそんな風に走って。“僕は天国を追いかけてるの。だってクリスマスだって皆が言うから”。道端のクリスマス、それは雪と風。道に吹きすさぶ風が子どもたちを泣かせる。光や喜び、それはショーウインドウの向こう側。あなたのためでもないし、私のためでもない。それは隣の誰かのため。坊や、楽しみなさい。でも、観るのはいいけど、何も触っちゃダメ。遠くから眺めるだけにしてね」

 ・・・要するに、貧しいストリート・チルドレンたちの悲しいクリスマスの夜を歌った歌なんですねぇ・・・シャンソンですねぇ、さすがピアフですねぇ。

 続いては、こちら。