疲れた表情でチェックインを待つ世界中からのサポーターたち(写真:Retsu Motoyoshi、以下同)

(元吉 烈:映像作家・フォトグラファー)

 2022年11月20日、初の中東開催となるワールドカップ・カタール大会が開幕した。

 開会式には俳優のモーガン・フリーマン、BTSのジョングクが登場、直前に辞退となったが歌手のデュア・リパの出演も予定されていた。

 この3人の並びは一見、統一性がないように見えるが、ジョングクは全世界で人気を誇る韓国人ポップグループの一人、デュア・リパは両親がイスラム教信者、モーガン・フリーマンは2019年にゾロアスター教(イラン高原に住んでいた古代のアーリア人が信仰していた古代ペルシアに由来する宗教)の信仰を明らかにするなど、西洋の中の非・西洋を意識した人選となっていたのは明らかだった。

 そのモーガン・フリーマンは開会式で下半身が欠損している現地の大学生、ガリム・アルムフターと人類の共生について語り合い、「私たちはひとつの大きな種族としてここに集まった。そして地球は私たちが住むテントである(we gather here as one big tribe, and earth is the tent we all live in)」 と2018年のロシア大会以来、4年ぶりのワールドカップの国際性や多様性をアピールした。

 一方、デュア・リパは開幕前に話題になったカタールにおける移民労働者に対する不当な扱い、同性愛を違法とする法律などへの抗議を理由として開会式への出演を辞退した。

 筆者が主に観戦した日本代表は戦前の下馬評を大きく裏切り1位でグループリーグを突破。開幕3日前になって、一度は認めたはずのスタジアムでのアルコール販売を禁止するというお達しが一方的にカタール政府からなされ、FIFAのメインスポンサーであるバドワイザー製のアルコール入りビール(ノンアルは許可)がすべてスタジアムから撤去された。だが、アルコールなしでの観戦にも関わらず、多くの日本代表ファンを熱狂させた。