全国的な統計はまだなく正確な人数は不明ですが、広州では約30万人以上が自由職業者として活動しているとされています。上海では100万人を超すのではないかといわれています(「上海自由职业者规模已达百万,为何面临“无法向别人介绍自己”的尴尬?」、https://news.sina.com.cn/c/2021-01-25/doc-ikftssap0563637.shtml)。

 広州市では1000人以上のクリエイターが、「自力市集」(自力マーケット)という青空市を定期開催するとともに、ビジネスノウハウを共有するための学びの場を設けています。

クリエイターが集まる、広州市内で開催された青空市(筆者友人より提供)

 今回、自由職業者として活躍する、宗さん(仮名)にお話をお聞きしました。

常に成長と模索が必要、決して楽な生き方ではない

――2010年から自由職業者として活躍されているそうですね。この10年で自由職業者は増えているのでしょうか。

宗さん:はい、増えています。その要因としてはやはり社会全体に広がる危機感があると感じています。ご存じの通り多くの若者が就職難に直面していることに加え、大きな人材の引き受け手であったテック企業も人員整理をし始めています。自立した生き方を求めるのは、防衛本能によるものかもしれませんね。

――自由職業を志向する人になにか特徴はありますか。

宗さん:多くの人は、自分が行ってきた仕事の延長線上で、より自由な働き方を目指しています。デジタルから非デジタルへといった業種や業界を飛び越える事例は少ないですね。ただ組み合わせ方や新しい分野を取り入れることはよくあります。例えば、ライター業だった人が複数人で楽しむテーブルゲーム用の脚本執筆に挑戦したり、人物モデル撮影を本業にしていた人が動画編集を手掛けてみたり、ということです。

――一般的なフレキシブル勤務から自由職業者になる人はどれぐらいいますか。

宗さん:まだ少数です。多くのフレキシブル勤務は業務内容が固定されていますが、自由職業者は常に成長と模索が必要なキャリアです。完成されたシステムの中で働くのとは大きく異なります。

――自由職業者に対する社会の捉え方は変わってきていますか。

宗さん:自由職業者という生き方は広まりつつありますが、やはり世代間に考え方の違いはあります。子供を持つ親にとっては安定した生活、会社勤めの方が受け入れやすいでしょう。社会保険制度などの点で支援体制が整ってきてはいますが、自由職業者は決して楽な生き方ではありません。安定した収入を得るのは難しいですし、ベテランになっても常にスキルアップを図らないと生き残れない世界です。

――自由職業者の意識も大きく変わっているのでしょうか。

宗さん:大きく変わったのは自分の職業に対する考え方です。従来は、とにかく会社を大きくしたい、上場や融資による成長を目指したい、という考えがありましたが、多くの人が結果的に失敗しました。今は、自分の手掛けている仕事や領域を大切にしたいと考え、クリエイターとしての本分を大切にする人が増えたように感じます。