(姫田 小夏:ジャーナリスト)
6月1日にロックダウンが解除された上海では、無症状感染者を含む新規感染者数が1日20人を下回る日々が続いている。“ほぼゼロ”に等しいが、6月第2週に市内16区のうち13区の住民全員を対象にしたPCR検査が行われた。
“ゼロコロナ徹底”の裏には何があるのか。大陸での騒動を外から観察する華僑・華人たちに聞いた。
怪しげな製薬メーカーが“コロナ薬”で大儲け
多くの住民が自宅に閉じ込められた4月上旬、上海市では中国保健当局が推奨する“コロナ薬”が一部の家庭に配られた。
「蓮花清」というこの内服薬は、2003年のSARS期間にわずか15日で開発された漢方薬だ。解熱や解毒作用を持つことからコロナにも有効だと当局のお墨付きを得ていた。製薬メーカー「石家庄以岭薬業」(本社:河北省)の株価は、2020年1月から4月にかけて3倍に跳ね上がり、2022年に入ってからも最高値を更新し続けていた。
4月3日、石家庄以岭薬業から上海に支援品として800万箱が届けられたが、中には「食料の配給は届かないのに『蓮花清』ばかりが立て続けに届いた」という家庭もあった。ほどなくして、この漢方薬の “怪しさ”が表面化する。「WHOも推薦」などの口上は事実ではなく、効能についても専門家が疑問を呈した。直後、同社の株価は急落した。