パーム油の原料となるアブラヤシの果実(写真:ロイター/アフロ)

 世界最大のパーム油生産国のインドネシアが、4月28日から実施していた「全面輸出禁止」を、国内外の反発から一転して5月23日に解除。ジョコ・ウィドド大統領の指導力に疑問符を付けられる事態となっている。

 パーム油はアブラヤシの果実から取られる油で、食用油やマーガリン、ショートニング、さらには化粧品の原材料として利用されている。インドネシアのパーム油生産量は世界の6割近くにもなり、もちろん日本向けにも輸出されている。

 今年2月24日にロシア軍によるウクライナ侵攻が始まると、その影響で、ロシア産やウクライナ産のひまわり油が品薄になったため、パーム油の需要が急増、価格が高騰するようになった。その状況を見て、インドネシアのパーム油関連業者が目先の利益確保を目論んで、国内消費用のパーム油まで輸出用に振り向けたため、インドネシア国内でもパーム油が品薄となり国民から不満が高まっていた。

インドネシアの家庭料理に不可欠のパーム油

 インドネシアでは流通が未整備の面が多く、特に冷蔵・冷凍輸送に関しては地方に行けば行くほど発達が遅れている。そのため魚や肉の生食が衛生面で危ないこともあり、とにかく食用油で「揚げる」のがインドネシア料理の基本だ。そこに欠かせないのが食用油のパーム油なのだ。

 そのため国際市場でのパーム油高騰によって、国内消費の需要に応えられないとなると一大事なのだ。この国内のパーム油危機を乗り越える手段として発動されたのが、全面禁輸措置だった。