政府による一時休業命令によりシャッター街になった(筆者撮影、以下同)

 オミクロン株が香港を襲っている。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の体験を生かして新型コロナウイルスを抑え込んできた香港だが、2022年に入りオミクロン株による感染爆発を引き起こし、医療がひっ迫するまでに追い込まれた。香港政府は中国政府の方針に従って「ゼロコロナ」政策を推進しているが、「ウィズコロナ」も模索してきた。中国もいずれはウィズコロナに転換しなければならないため、香港がその実験場になる可能性がある。(高橋 清:香港在住ジャーナリスト)

オミクロン陽性者の9割がこの3カ月間で

 新型コロナウイルス対策の優等生だった香港が危機に陥っている。2021年12月30日まで83日間連続で市中感染を防いできたが、同年の大晦日に19人の新規感染者を確認。そのうち2人が市中感染だった。これを機に徐々に感染者が増加し、3月3日は5万6827人を記録。大晦日から3月12日までの新規感染者は55万7846人である。感染者の累計が62万3635人であることから、全陽性者の89.5%がこの3カ月ちょっとで発生したことになる。

 政府は感染者急増を受けて、18時以降のレストランでの店内飲食禁止、飲食やアミューズメント、スポーツジムなど15業種以上への一時休業命令を下した。だが病院はもはや医療崩壊の状態で、香港のゼロコロナ政策はまったく機能していないと言ってよい。

高齢者ほど接種率が下がる香港

 香港で採用されたワクチンは、米ファイザー/独ビオンテックの「コミナティ」と北京の科興控股生物技術(シノバック)の「コロナバック」、そしてアストラゼネカ製ワクチンの3種類である。このうちアストラゼネカ製は血栓の副反応がドイツなどで発生したことから輸入をしなかったため、ファイザー製とシノバック製の2つで行われている。

 ワクチンの接種率だが、3月13日時点で1回目は91.0%、2回目は80.1%となっている(3回目の接種者は226万2704人)。香港の特徴として挙げられるのは、12歳~69歳までの2回目終了の接種率は各世代とも約9割に達するが、70~79歳は80.1%、さらに80歳になると54.6%まで一気に下がる点だ。