「ウェルビーイング」(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)というキーワードが生み出す大きな潮流は、日本人のライフスタイルをどのように変えるのか? また、どんな新しい産業や市場を生み出すのか? 消費者目線で社会トレンドをウォッチし続けてきた統合型マーケティング企業「インテグレート」CEOの藤田康人氏が考察する本連載。今回からは、ウェルビーイングに取り組む実践者たちとの対談を通じて新しいビジネスの形を探っていく。
最初に登場するのは、クラシコム代表取締役社長の青木耕平氏。自分用にあつらえられたかのように人生が「フィットしている」と感じられることこそ、本当の意味で豊かで幸せなことではないか、と定義する青木氏は、自社サイト「北欧、暮らしの道具店」を通じて、実用的でありつつ暮らしを彩るものを独自の視点でセレクト・オリジナル開発して販売している。
2回にわたってお届けする藤田氏と青木氏の対談企画。前編では「ウェルビーイングを軸としたサービス開発」をテーマに語り合った。(JBpress)
誰かが作った概念をもとに幸せや豊かさを計測するのは難しい
藤田康人氏(以下、敬称略) 最近、幸せの定義の中で「ウェルビーイング」という単語がよく出てきますが、「幸せになろう」というのは、何だか宗教的で違和感を覚えてしまいます。私自身は、ウェルビーイングとは日々の積み重ねの結果であり、暮らし方や生き方、職業の選び方、食べ物の選び方などの延長線上にあるようなイメージを持っているんです。青木さんの「フィットする」という表現は、まさに私がウェルビーイングに抱いている感覚と合致していてとても腑に落ちました。青木さんが「フィットする暮らし」に行き着いたきっかけや、どんな思いで「フィットする」と表現し始めたのか、教えていただけますか。