楽天球団史上最年少で監督に就任するとクライマックス・シリーズに進出。翌年には常勝・ソフトバンクホークスの1軍コーチとして球団の日本一に貢献し、来シーズンからは西武ライオンズへと指導の場所を移す――平石洋介は、どの球団に行っても選手から厚い信頼を得てきた。

 PL学園、同志社大学、トヨタ自動車、そしてプロ。さまざまな「野球観」「指導論」と接する中で導き出した平石の「現代のコーチ論」を聞いた。

本原稿は「野球をもっと楽しむ場所を作る」ことを目指し鈴木誠也、平石洋介らがコンテンツを配信する「オンラインBASEBALL PARK」の一部をまとめたものです。

選手にきついトレーニングをさせるには?

 野球シーズンはひと段落し、メディアを賑わせるテーマは契約更改や移籍などがメインです。しかし選手たちは決して休んでいるわけではありません。

 冬を超えて成長する、とはよく言ったもので「試合ができない」この時期に、体を休めながらも、いかにトレーニングを積み、能力を上げていくことができるかは、翌シーズンの成否を決めると言っても過言ではありません。

 選手によっては、この時期のトレーニングが一年の中で最もきつい、という人もいるほどです。

「きついトレーニング」。決してやりたいものではありません。誰だって、楽をしたい心があるものです。でも、やらなければうまくならない、試合で勝てない、ライバルに負けてしまう……。

 やりたくないけど、やらなければいけない「きついトレーニング」と指導者はどう向き合うべきでしょうか。今回は、そんな視点で綴ってみたいと思います。

 指導をしていると「トレーニングをさせたい」「鍛えさせたい」という思いが先行してしまうものです。きついトレーニングを乗り越えた先に、選手の成長した姿を思い描き、それに向かって試行錯誤する。

 しかし、実際に選手たちにそれを意欲的にしてもらうのは、とても難しいことです。