(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
12月16日、欧州連合(EU)の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)と英国の中銀であるイングランド銀行(BOE)が、それぞれ金融政策運営に関する重要な決定を下した。
ECBは、コロナ危機対応のために導入した資産購入策であるパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を当初の予定通り2022年3月末で終了すると発表した。現在、ECBはPEPPの下で月に700億ユーロ(8兆8900億円)前後の金融資産を購入している。内訳はほぼ国債で、1〜3月期は購入ペースが落ちることになる。
3月末でPEPPを打ち切る一方、ECBは通常の資産購入プログラム(APP)による資産購入を、4~6月期は月400億ユーロに倍増する。現在、ECBは月200億ユーロの規模でAPPを実施している。その後、7〜9月期にはAPPによる資産購入を月300億ユーロに減額し、10月以降は再び月200億ユーロに戻す。
つまり、PEPP終了に伴う激変緩和措置として、APPを一時的に増額するということだ。なお、ECBは10月以降のAPPに関しては特に期限を明示せず、利上げが意識される時まで継続するという方針を掲げるにとどめた。
また、ECBは再投資の期限に関して、PEPPの場合は従来の期限を1年延長して2024年末までとした。APPについては、最初の利上げ後も再投資を継続する方針を示している。とはいえ、再投資終了後のバランスシートの圧縮に関しては、基本的に満期償還を待つ戦略になるため、順調に行われても10年近い歳月を要することになるだろう。