中国軍の対日攻撃用DF-21弾道ミサイル

(北村 淳:軍事社会学者)

 岸田文雄首相が12月6日の所信表明演説で、我が国のミサイル防衛戦力に「敵基地攻撃能力」を選択肢に加える意思を表明した。

 “敵基地攻撃能力”という用語は、しばしば指摘されているように、その定義があやふやであり、本コラムでも繰り返し指摘しているように時代錯誤的用語である(参考:「『敵基地攻撃』という表現がもはや現実に即していない理由」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66944)。ただし、政府や多くのメディアは、この語を「我が国への弾道ミサイル攻撃を企てる敵のミサイル発射装置・施設を先制的に攻撃して、敵が我が国に弾道ミサイルを発射できなくしてしまうような戦力」という意味で用いている(ただし憲法上許されると考えられる「先制的」は、我が国へのミサイル発射が明らかになった段階で、という意味である)。

 “敵基地攻撃能力”という用語そのものには問題があるが、
(1)敵の弾道ミサイル発射能力(装置や施設)を、
(2)敵が我が国に弾道ミサイル攻撃を実施する以前に、
(3)自衛隊によって攻撃して破壊あるいは麻痺させてしまう、
という方針は、理にかなった弾道ミサイル防衛(BMD)方針の1つと言える。

 上記の防衛策は、「攻撃は最大の防御」という言葉があるように、あらゆる戦闘や闘争における基本的な防御方針の1つである。とりわけ数百kmあるいは数千km、そして場合によっては1万km以上もの遥か遠方から数分から数十分以内に攻撃目標に到達する超高速小型兵器の弾道ミサイル攻撃に対しては、この方針すなわち「能動的BMD策」は、効果的方針と言える。もちろん、的確に敵の弾道ミサイル発射能力に対する先制攻撃が成功できることが大前提であることは言うまでもない。