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ようやく見つけた、新聞のコンビニ店頭販売。この光景もすぐに消えそうだ(筆者撮影)

(文:平井久志)

 韓国に久しぶりに暮らしてみて驚いているのは、メディア状況の急激な変化です。

 8月に、日本のBSのテレビ局から出演を依頼されました。その時に担当者から、「光復節(8月15日)の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の演説を韓国の新聞各紙がどう報道しているか、韓国の新聞を手に持って解説してくれませんか?」と頼まれました。

「ああ、いいですよ」と答え、僕が住んでいるソウル市西大門区のコンビニに新聞を買いに出かけました。しかし、5、6軒のコンビニを訪れたのですが、どこにも新聞を売っていないのです。ある店では主人が「紙の新聞なんてないよ」とけんもほろろでした。慌てて、テレビ局に「自宅で購読している『中央日報』しか新聞がないけどいいですか」と連絡をしました。

コンビニで新聞が売っていない

 特派員時代は日刊紙を全部購読していましたが、今回は経済的な理由で1紙しか購読していません。韓国の新聞は各社ともネット上にサイトがあります。日本のように「この記事は有料です」なんてけちくさいことはしません。ほぼ全記事を無料で公開しています。ですから読む気になれば、ネットで新聞のほとんどが読めるのです。

 ソウル市内の中心部では、コンビニでも新聞を売っていますが、新聞を置いている店舗が激減しています。それはコンビニの問題ではなく、韓国人が紙の新聞を読まなくなっているからです。

 ただし、韓国人の多くは新聞社のサイトで記事を読むよりは、ポータルサイトの「ネイバー」や「ダウム」などで記事を読んでいます。韓国の『聯合ニュース』は随分前から、新聞社から受け取る配信料よりも、ポータルサイトから受け取る配信料の方が多くなったと聞きました。これは、いまだに地方紙の分担金が主流の日本の『共同通信』とは大きく違う点です。

 通信社は直接の読者がいないので双方向性がない、と言われてきましたが、韓国では『聯合ニュース』がポータルサイトに流れて、読者はその記事に反応するので、逆に新聞社より通信社が読者との双方向性を早く作りやすい環境が生まれつつあります。

 新聞社もポータルサイトに記事を提供していて収入を補填していますが、記事配信のスピードは、紙の新聞のペースですので、速報性では通信社が早いようです。

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