大統領など国のトップを決める選挙の際に、熾烈な舌戦とあら探しが繰り広げられるのはどの国も変わらない。ご多分に漏れず、来年3月に大統領選を控える韓国でも、与野党の大統領候補の疑惑が噴きだしている。今回は保守系野党の有力大統領候補、尹錫悦氏を巡る疑惑と、その発端となった同両議員の告発について、韓国の作家・コラムニストのオセラビ氏が解説する。
◎オセラビ氏の過去の記事はこちら(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E3%82%AA%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%93)をご覧ください。
(オセラビ:作家・コラムニスト)
次期大統領選挙が5カ月後に迫った韓国。文在寅政権の後も与党が政権維持に成功するのか、それとも保守政党が政権を奪取するのか、仁義なき戦いが繰り広げられている。
現在、各党では大統領候補の予備選が佳境を迎えており、1回目の党内選挙が終わった段階だ。今後、3回の選挙を経て、11月はじめには与野党の大統領候補が確定する。
党内の大統領候補とライバル候補に対する熾烈な舌戦とあら探しが現在進行中だが、そんな政界を驚かせる事件が発生した。主人公は最大野党「国民の力」に所属するチョ・ソンウンという33歳の若手女性政治家だ。「チョ・ソンウン・ゲート」、あるいは「チョ・ソンウン・スキャンダル」と言ってもおかしくないほどの波紋を呼び起こしている。
発端は、最大野党の有力大統領候補である尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長に絡む疑惑だ。尹候補が検察総長として在職していた時、職位を利用して2020年の国会議員総選挙を控えた政権党の主要議員の刑事告発を教唆した疑惑だ。
その疑惑に対して、記者に情報提供した人物がチョ・ソンウン氏である。チョ・ソンウン氏が日頃から親交があったインターネットメディアの記者に疑惑を伝え、それが記事になって拡散した。当事者の尹候補は、「検察総長在職中、誰に対しても告訴を教唆したことはない」と述べ、正体不明の怪文書だと一蹴した。
尹候補の疑惑については捜査が始まったばかりだが、どの大統領候補よりも国民の支持を集める尹候補がライバル候補を追い落とすために職位を利用したとすれば、極めて悪質である。しかも、今回は党内の同僚議員からの告発だ。
チョ・ソンウン氏とはどんな人物なのか。