北朝鮮が廃棄した豊渓里の各実験場(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 北朝鮮が寧辺核施設を電撃的に再稼動させたと見られ、全世界を驚かせている。北朝鮮の核の脅威が出るたびに不安と憂慮が高まるが、その北朝鮮で放射能被ばくの被害者が発生していることに注目する人はいないだろう。今回は平安南道平原郡の栄誉軍人村に住む特級栄誉軍人の被ばく被害事例を伝えよう。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

除隊後に続出する特級栄誉軍人

 2020年夏、平安南道の人民病院に除隊した軍人たちが身体検査を受けにやって来た。「栄誉軍人」を申請するためだ。嘔吐や急激な食欲減退、疲労感の蓄積と免疫低下による感染症の発生など、さまざまな症状に苦しみ、病院を訪れる彼らの中には、急速な脱毛現象で禿げ頭になった人や奇形児が2人生まれた人もいた。

 除隊した年と年齢はさまざまだが、被ばく者を自認する彼らは「自身が栄誉軍人」だと主張する。そんな彼らが同日同時刻に、平安南道の人民病院に身体検査を受けに来たのは傷痍軍人であることを証明する「栄誉軍人」を申請するためだ。

 彼らは「131指導局」出身の除隊軍人だ。131指導局は金正日総書記の指示で1985年に創設された核施設の建設部隊で、社会安全部建設局部隊を母体とする部隊だ。朝鮮労働党に対する忠誠心に一点の曇りもなく、家系がしっかりしていると立証された、優秀な下士官から選抜して作られた部隊である。

 金正日総書記は、「私が核開発の総司令官で、131指導局は私の核開発部隊、私の親衛隊だ」と話して彼らの忠誠心を鼓吹した。その時から131指導局は朝鮮労働党軍事委員会直属の軍部隊となった。今は朝鮮労働党軍需工業部直属で、北朝鮮の核開発の主力部隊として活動している。

 131指導局の正式な名称は「131原子力指導局」で、数十年間、北朝鮮の核施設建設やウラン採取・加工などで隠れた主役を担ってきた。とりわけ核問題を巡り北朝鮮と国際社会が衝突した1990年代以降、131指導局は北朝鮮全域に秘密核施設を建設し管理した。