(田中 美蘭:韓国ライター)
2021年も、残すところあと3カ月半ほどとなった。新型コロナが世界で猛威を振るい、これまでの日常生活や常識を大きく変化させて既に1年半になる。韓国ではワクチン接種が進みつつあるが、接種による効果や集団免疫の獲得については未知数であり、先が見えないことに変わりはない。
それでも、今月より小学校から大学まで学校での全面的な登校授業が再開されるなど、コロナとの共存に向けた取り組みが始まりつつある。その中で、コロナ禍で国民を対象に2回目となる「災難支援金」の支給が行われている。
日本では昨年、新型コロナへの経済対策の一貫として「特別定額給付金」が支払われた。国民一人あたり(日本で住民登録をしている外国人も含む)に現金10万円の支給である。韓国でも、新型コロナの経済対策として、昨年に続き災難支援金が支給された。
給付金の名称に「災難」という言葉が盛り込まれているのは、コロナという未曾有の災難によって、国民が忍耐と制限を強いられていることへのねぎらいの気持ちが込められているためだという。
8月30日に文在寅大統領が「大多数の国民に対し一人あたり25万ウォン(日本円で約2万3000円)を支給する」と発表し、9月6日からオンラインまたは自治体の役所を訪問しての申請受付が始まっている。
この支援金が日本と大きく異る点は、現金支給ではなくクレジットカードや銀行のキャッシュカードに支給額が付加されるか、いずれかがない場合は自治体からのギフトカードのようなスタイルでの支給となる点である。
例えば、世帯者数が4人であれば合計100万ウォン(約9万3000円)の支給になる。支給額分の使用に関しては居住地域のみだったり、大型スーパーやデパート、チェーン店やオンラインショップは除いたりと制限が設けられており、「地域経済の活性化」を目的としている側面もある。
韓国の場合、申請といった手続きに関してはオンライン化が整備されている他、オンラインに不安のある高齢者については居住地区の役所での直接の手続きも受付けるなどスムーズに進んでいる。
もっとも、文大統領が述べた「大多数の国民」という言葉を巡る混乱や、支援金の使用制限などに早くも不満の声が上がっている。