キリスト教会に集う北朝鮮の人々(写真:Fujifotos/アフロ)

「ハレルヤ」はヘブライ語に由来する神を称える言葉だ。その「ハレルヤ」が北朝鮮で波紋を呼んだ。北朝鮮社会主義憲法第5章68条には、「公民は信仰の自由を持つ。この権利は宗教施設を建て、宗教儀式などの許容が保障される」と明示されている。この条文に基づき、平壌にボンス教会堂、チルゴル教会堂、奨忠聖堂といった宗教施設が建てられた。

 そんな北朝鮮で、2019年5月頃、北朝鮮史上初となる事件が発覚した。金日成総合大学の大学生たちの間で起きた「ハレルヤ」秘密地下教会事件である。今回の「北朝鮮25時」はハレルヤ秘密地下教会事件について。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮の地下教会といえば、政権から弾圧を受ける存在である。信者は聖書の言葉とキリスト教の教理に従って信仰生活を送り、金日成主席の偶像崇拝を強要する北朝鮮政権に協力しない。北朝鮮の地下教会は信仰を隠した人々で、草や木を切り取って残った根と幹の下の部分を意味する「切り株」信者と、90年代以降、中国に脱北し、信仰を携えて北朝鮮に復帰した信者たちがいる。脱北後、韓国など亡命先の生活になじめず、北朝鮮に帰る人間は年間数十人に上る。

 北朝鮮の秘密地下教会活動は政治犯に分類される、国家重大犯罪行為とされている。

 地下教会は北朝鮮政権のキリスト教抹殺の歴史から始まった。

 南北を含めた朝鮮半島でキリスト教勢力の影響が最も大きかったのは、平安道(ピョンアンド)と黄海道(ファンヘド)である。1992年に発行された『基督教大年鑑』によると、1940年に、北朝鮮地域には26万人の信者と2800余りの教会、2000人余りの教職者がいたが、信者の66%が平安道、22%が黄海道だった。

 金日成主席は戦後、政権を獲得するにあたって北朝鮮のキリスト教勢力を弾圧した。

 金日成政権の弾圧は、主に総選挙の実施と「北朝鮮基督教連盟(北基連)」の結成から始まった。金日成主席の外祖父であるカン・リャンウク牧師が、金日成主席が委員長を務めた北朝鮮臨時人民委員会の書記長職を引き受け、1946年11月に「北基連」を発足させる。そして、キム・イクドゥ牧師、キム・ウンスン牧師らを懐柔や脅迫によって「北基連」に加入させ、共産主義に反対した牧師組織「北基連5道連合労会」に所属していた牧師たちを1947年に強制的に加入させた。

 未加入者を講壇に立つことができないようにするなど、宗教者に対する絶え間ない粛清と処刑を行って、朝鮮戦争後には北朝鮮の公式的な教会は一つ残らず消滅した。反キリスト教的な社会的雰囲気で「脱教会」ムードが形成されて、キリスト教徒は社会主義と妥協した。

 平安道と黄海道の一部のキリスト教徒は、隠れて信仰生活を送る「切り株」信者となり、1990年代の「苦難の行軍」を経て、中国から北朝鮮の信者拡大のために入ってきた宣教師の影響を受けた信者らは秘密地下教会組織を拡大させた。