第1に「食」の領域です。自然や社会、人、そして自分自身の心身とのつながりに立ち返ることが容易な領域と言えるでしょう。食が本来持つ、人として根源的な繋がりを体感できるエクスペリエンス設計は、誰もが自分ゴト化しやすい共通のウェルビーイングテーマになり得るはずです。

 第2に「毎日の行動を一つひとつ見直し、丁寧で豊かな時間に変えていく」という方向性です。ストレスになりがちな日々のルーティンの行動に、ウェルビーイングという観点から光を当ててみるのです。すると当たり前の行動にまったく新しい価値と楽しさが生まれてくるかもしれません。

 たとえば家電店の二子玉川 蔦屋家電は、この2月から4月にかけて「Well-being ~みんなにいいこと はじめよう。~」フェアを開催し、「カラダとココロが健康で美しく、満ち足りた暮らしを送る」ことのできる製品を紹介しました。日々の生活ルーティンを丁寧で豊かな時間に変えるための催しと言えるかもしれません。

 第3に「自分の好きなことを突き詰める、贅沢をきわめる」という方向性です。星野リゾートやスノーピークのリゾート事業、自遊人が運営する旅館「里山十帖」などはそれに当たるでしょう。いずれも地域の社会や自然との豊かで有意義な繋がりをとことんまで突き詰めた特別な体験を提供しています。

【3】ウェルビーイングであると感じることができるか?

 そして最後の重要な課題は、「ウェルビーイングにつながる行動への感度を上げていく」ことです。上記の行動を含めて、自分にとってどんな状態がウェルビーイングなのか、自分がいまウェルビーイングにつながる行動をとっているのか、自覚的になるという方向性です。自分の心や身体によりポジティブかつ意識的に関与していくということ。これは、個人のウェルビーイングのベースとして非常に大切であると考えます。

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 今回は、日本国内におけるウェルビーイング関連ビジネスを概観してみました。ここで取り上げた領域がもちろんすべてではありませんが、各企業がウェルビーイングをキーワードに自社の事業ドメインを拡張・深耕していくことが、今まさに高まっている時代の要請に応え、これからの日本、そして生活者の幸せをデザインしていくことに繋がっていくのではないでしょうか。

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