また社員がストレスフルで離職率が高いと言われるIT業界では、グーグルがマインドフルネスのメソッドなどを取り入れた独自の「SIY」(サーチ・インサイド・ユアセルフ)というプログラムを社員向けに開発、さらにそれを外部へも提供しています。またマイクロソフトも、オフィス365を利用するユーザーを対象に「MyAnalytics」ダッシュボード上でユーザーのウェルビーイング状態を可視化するサービスの提供を行っています。人材管理系では、ウェルビーイングな組織をつくることを標榜するカオナビが急成長を遂げるなど、様々なレイヤーの企業が、ウェルビーイング経営にまつわるビジョンを発信したり多様なサービスを展開したりしています。

 各企業が、こうしたサービスの導入を積極的に進めている背景としては、「従業員のウェルビーイング」の実現とあわせて、その先に「生産性の向上→企業の競争力UP」がゴールとして見えることが、大きなモチベーションになっていると推察されます。

ウェルビーイングな街づくり

 ウェルビーイングが大きなテーマとして設定されているビジネス領域として、住宅地や商業施設を開発する「街づくり事業」も挙げられます。

 富士山裾野でトヨタ自動車が推進している実験都市「ウーブン・シティ」をはじめ、現在、日本各地で次世代の街づくり(スマートシティ)構想が数多く立ち上がっています。そこでは、テクノロジーを駆使した生活利便性の追求とあわせて、住人のウェルビーイングを実現するまちづくりがテーマとして設定されています。

 その際、“ウェルビーイングな街”を具現化する鍵の1つとされているのが、都市で失われつつある「コミュニティ」の再構築です。各地のスマートシティ構想においては、多種多様な事業者や住人に新たなコミュニティを構築してもらうための様々な試みを模索しています。

 商業施設にも、ウェルビーイングの波が押し寄せています。先般、立川駅(東京都立川市)にほど近いエリアで開業した複合型商業施設「GREEN SPRINGS」は、まさにウェルビーイングをテーマに掲げ、建物、空間設計からソフト、コンテンツ展開に至るまで、訪問者の“ウェルビーイング”を実現するための様々な仕掛けを実装した施設となっています。