刺さりすぎの北朝鮮国旗(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮で注目されている職業の一つに、燃油販売所で働く「燃油販売員」がある。燃油販売所はいわゆるガソリンスタンドで、燃油販売員は実際に給油する職員を指す。燃油販売員の平均月収は一般労働者と同様、5000北朝鮮ウォン未満である。

 コメ1kgが5500ウォンの北朝鮮で、月給5000ウォン未満の燃油販売員はコメ1kgすら買えないが、人気の職業となっている。なぜ、人気があるのだろうか。今回の「北朝鮮25時」は、燃油販売員の裏の顔について語る。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 北朝鮮の燃油販売所で売られている「スタンダ」と呼ばれる油は、市中で流通している油と比べてはるかに品質が良い。一般的なガソリンのオクタン価(octane value)は91~94未満だが、北朝鮮の市中で闇取引されているガソリンのオクタン価は70にも達していない。その中で、燃油販売所で売られているガソリンのオクタン価は95以上と思われる。

 また、闇取引されるガソリンは酸化安定性の悪い場合が多く、燃料系統の金属を腐食させたり、燃料系統を詰まらせたりする。

 当然、燃油販売所のガソリンは市中のガソリンと比べて値段も高いが、高級乗用車を所有する政府機関やカネを持っている人々は燃油販売所で給油する。そこでの決済手段は外貨だ。

 そして、燃油販売所で働く販売員はある方法を用いて不法収益を得る。それが、燃油販売員が人気の職業になっているゆえんだ。

 不法収益を得る第一の方法は「リサイクル混合油」だ。 ガソリンなどにリサイクル油を混ぜて販売し、差益を懐に入れるのだ。

 販売員は個人から安価なリサイクル油を後払いで購入し、7対3で混ぜ合わせる。純正油が7、リサイクル油が3の割合だ。ガソリンを1リットル販売すれば、300ミリリットル分の差益が収益になる。

 この収益をリサイクル油を販売した個人と山分けする。リサイクル混合ガソリンのオクタン価も93~95を上回っているようで、購入者に知られることはない。

 一方、個人市場で流通しているガソリンは純正油が3、リサイクル油が7のリサイクル油だ。オイルフィルターが詰まり、エンジンにオイルが円滑に供給されないことが頻繁にある。走行中にエンジンが止まる例も少なくない。高級車を所有する人は、油を燃油給油所で購入せざるを得ない。

 もう一つの不法収益は質量と体積の差異である。

北朝鮮のガソリンスタンド(写真:AP/アフロ)