長崎市の端島(別称、軍艦島)炭坑を含む世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を巡り、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が去る7月22日、戦時徴用された朝鮮人労働者に関する日本政府の説明が不十分だとして「強い遺憾」を盛り込んだ決議を採択した。
世界遺産委員会は、歴史の全体像が示されていないことや強制労働が理解できる展示ではないこと、犠牲者を記憶する展示がないことなどを指摘したという。
外務省幹部は遺憾決議が採択された背景に、韓国政府がユネスコに強く働きかけた影響があるとみる。「韓国が専門家の意見を金科玉条のように扱うユネスコの雰囲気につけこんで政治利用した」という分析だ。
外務省は水面下で巻き返しを図ったが、国際社会における日本の評価を貶めようと目論む韓国の政治工作が成果を収める結果となった。
拘束力はないが、韓国が勝って日本が負けたことを意味する決議に、韓国側が勢いづく可能性がある。決議に従えば、韓国の主張が正しく、日本の主張が間違っていると認めることになりかねず、日本の立場が危うくなる。
ユネスコの世界遺産委員会の遺憾決議は、2015年の世界遺産委員会における外務省の安易な約束が招いた結果と言えるかもしれない。暫定リスト入りした2009年、十分な調査を行わなかったことが悔やまれる。
しっかりとした調査を実施していれば、世界遺産登録時の韓国の攻勢に対抗する資料になっただろうし、ユネスコを説得できた可能性もある。ユネスコや韓国と交わした約束は守らなければならないが、史実をねじ曲げる展示は後世への恥になる。