(文:緒方麻也)
約13億8000万人という巨大な人口を抱えるインドだが、ことスポーツとなると「国技」クリケットやホッケーなどを除けば全く存在感がない。しかし、東京五輪に向けて強化。過去最多のメダル獲得という予想も!?
これまでの五輪でインドが獲得したメダルは初参加の1900年パリ大会からの累計でわずか28個(金9、銀7、銅12)。このうち金8個を含む11個は、かつて強豪国として鳴らしたフィールドホッケーでのものだ。それでも2008年の北京五輪では射撃で初めて個人種目での金メダリストが誕生。2012年のロンドン五輪では、レスリングや射撃などで銀2銅4と過去最高の成績を挙げた。前回リオデジャネイロでは銀1銅1と低迷したが、その分、東京大会にかける意気込みは大きい。
インド・スポーツ庁では陸上やレスリングなど、投資コストが比較的小さくて済む競技に絞って重点的に強化し、厳しい財政の中で関連予算を増額して練習環境の改善や外国人コーチの招へいなどに取り組んできた。東京五輪には過去最大となる約120人の選手団を送り込む。
東京五輪の有望選手は?
メダル有望選手の筆頭が、女子バドミントンのP・V・シンドゥ選手(26)。ロンドン五輪・銅のサイナ・ネーワル選手らを育てた名伯楽プレラ・ゴピチャンド氏が主宰するアカデミーで技術を磨いた。リオ五輪では日本の奥原希望選手を破って決勝に進出し、銀メダルを獲得した。
そのとき決勝で敗れたカロリーナ・マリン選手(スペイン)は今回欠場するが、強豪ぞろいの中国勢や日本の山口茜選手らが金メダル争いのライバルとなる。
女子レスリング・フリースタイル53キロ級に出場するビネーシュ・ポガット選手(26)は、インドでも有名なレスリング一家の出身だ。彼女の従姉にあたるポガット姉妹は、人気俳優アーミル・カーン演じる元レスリング王者が2人の娘をレスラーとして鍛え上げるインド映画「ダンガル(邦題:きっと、つよくなる)」のモデルとなった。
リオでは膝の怪我に泣き準々決勝で敗退したが、2018年の英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ)や2021年のアジア選手権でいずれも優勝しており、東京大会でのメダル獲得に期待が高まる。ライバルはあの吉田沙保里の後継者・向田真優選手だ。
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