隣国空軍の戦闘機・爆撃機が、ミサイルを搭載して自国に向かって頻繁に飛来してきたとしよう。
こうした軍事的威嚇を受けた人々は、「偶発事故が起きるのではないか。近い将来、攻撃してくるのではないか」と不安になるであろう。
通常、戦闘機・爆撃機の攻撃を仕掛けるように見せつける飛行は、偶発事故や紛争防止のために、やってはならないことだ。
これを行う国は、近い将来、侵攻する意図があると見なされる。
現実的には、中国空軍機(特に戦闘機)が、2020年9月頃から、台湾に向けて頻繁に飛行を行っている。
台湾の防空識別圏の台湾南西部に侵入する威嚇飛行の回数が急激に増加しているのだ。
台湾が、このような威嚇を受ければ、危機が切迫し、大きな脅威だと感じるのは当然のことだ。
そこで、中国空軍が現実に台湾に対して向ける軍事的威嚇、特に各種中国空軍機による威嚇飛行の実態と狙い、台湾海峡を挟んだ中台の軍事的緊迫の意味について、分析して説明したい。
台湾人の意思を無視した中国の武力侵攻
中国の習近平総書記は、台湾人の意思を無視した発言を繰り返している。
「いかなる台湾独立のたくらみも断固として打ち砕く」
「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、共産党の歴史的任務だ」
中国は、台湾独立の動きに対しては「武力行使を放棄していない」ことを何度も表明してきた。
中国の反国家分裂法の第8条には、「もし台湾分裂勢力が台湾を中国から分裂させかねない重大な事態になれば、非平和的方式を取ることもある」と記述されている。
中国は、軍事侵攻の可能性がある根拠をここに示しているのだ。