5月9日、東京五輪の陸上競技のテストイベントが開催された際の国立競技場(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います」

 これは菅義偉首相が、今年1月18日に召集された通常国会の冒頭、施政方針演説で述べた言葉だ。

「コロナに打ち勝った証」「震災復興」からいつしか「安全安心」がメインテーマに

 それが1カ月後の2月20日未明、菅首相がはじめてオンラインで参加したG7サミット(主要7カ国首脳会議)を終えたあとには、興奮冷めやらぬように記者団にこう語っている。

「東京オリンピック・パラリンピックでありますけれども、今年の夏、人類がコロナとの戦いに打ち勝った証として、安全・安心の大会を実現したい、そうしたことを私から発言いたしまして、G7首脳全員の支持を得ることができました。大変心強い、このように思っています」

 だが、これは嘘だ。外務省がHP上で公表している当時の「G7首脳声明」を見ると、日本語でこう示されている。

「我々は、6月の英国におけるG7サミットにおいてこれらの優先事項についての具体的行動に合意することを決意し、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証として今年の夏に安全・安心な形で2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するという日本の決意を支持する」

 もうこの時点で「打ち勝った証」ではなく、「世界の結束の証」に置き換わっている。しかも、いつの間にか「安全・安心」がくっついて。