来日したインドネシアのルトノ外相(左)とプラボウォ国防相(右)(2021年3月30日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 日本政府がインドネシアからの戦闘艦艇受注を目指すことを、産経新聞がスクープとして報じました(2021年5月11日「〈独自〉インドネシアと艦艇共同生産 海自装備原型に 安保協力を強化」)。

 ただし、日本政府がインドネシアと交渉を行っている事実は、昨年(2020年)から報じられていました。また、同国のルトノ外相とプラボウォ国防相が来日し、外務・防衛担当閣僚協議、いわゆる2プラス2が行われるなど、かなり突っ込んだ協議が行われていることも以前から報じられていました。産経がスクープとしたのは、その受注が“海自の最新型護衛艦をベースとした共同生産方式”である点です。

 しかし、この受注に眉をひそめる人もいるでしょう。特に、必然的に技術移転を伴う共同生産方式となると、秘匿すべき防衛技術の流出につながるのではないか? しかも、その流出先は中国になるのではないか? という懸念を抱かざるを得ないからです。

 インドネシアには“前科”があります。日本が詳細な調査を実施し、経路選定まで行っていた高速鉄道建設計画で、中国に調査データを渡した上、中国へ発注したという“前科”です。これはたった6年前、2015年のことです。インドネシアの政権もまだ変わっていません。上記のような懸念が出るのも当然といえるでしょう。