急患のたらい回しや地域医療機関の閉鎖など、医療を巡る諸問題がメディアをにぎわしている。筆者は医療の専門知識は皆無だが、得意分野である「カネ」にまつわる切り口から取材を進めていたところ、医療界を舞台に新たなビジネスが展開されていることを知った。

 今回の主役はコンサルタント。そして彼らのターゲットになっているのは開業医だ。

 コンサルと開業医。一見ちぐはぐな組み合わせに映るが、現状では開業医がカネをむしり取られ、医療界の疲弊に拍車がかかろうとしているのだ。今回はその一端を紹介する。

こんなはずじゃなかった開業

 大病院での過酷な実地勤務を経てキャリアを積んだ医師の最終目標は何だろう。お叱りを承知で言えば、「病院内での出世」「学会での名声」、あるいは「開業」に大別されるのではないだろうか。

 筆者の友人医師らによれば、慢性的に人が足りない大病院での過酷な勤務に疲弊し、独立開業を志す向きが増加中とか。「特に眼科や皮膚科、内科、美容外科などで、首都圏や大都市圏を拠点に開業準備を進める医師が多い」という。

 これらの科目に共通するのは、産科や外科などと比べて訴訟リスクが低く、急患が少ないということ。だが、ここに落とし穴が待ち受けている。「訴訟リスクが低く、急患が少ない科目ほど医師が増え、競合する医療機関がどんどん増えてしまう」(関係筋)のだ。

 加えて、開業時には高額な医療機器を購入しなければならないほか、優秀な看護士や医療事務スタッフ確保のため、人件費もうなぎ上り状態にある。

 当然、開業時には自己資金のほか、金融機関からの融資が必要となるが、クリニック間の競合激化や初期投資の金利負担に苦しみ、「こんなはずじゃなかったとこぼす開業組が少なくない」(同)。

 こうした開業医の中には、「年利10~15%と高利の医療報酬(レセプト)担保融資を導入して自転車操業に陥っているところもある」(同)。ノンバンクや銀行の有力なローン商品に成長する兆しがあるとされるほどだ。

“経営カイゼン” の甘言

 競争が激しく、なかなか業績向上が見込めない業界にいち早く目をつけるのが、コンサルタントの仕事だ。新規開業組にも様々な経営指南のアドバイスが持ち込まれているようだ。

 具体的には、「マーケティング戦略」「内装リフォーム」「ネット利用のノウハウ」等々だ。「顧客(患者)満足度を上げ、ライバルに差をつける」というサービス業や流通業では昔からお馴染みの手法である。