企業イメージや採用ブランディングに良い影響をもたらす「SDGs」

「SDGs」への取り組みはそれぞれ簡単ではない部分もあるが、企業側に大きなメリットを与えてくれることも覚えておきたい。SDGsへの取り組みを行うことによって、企業イメージを向上させ採用ブランディングにも良い影響を与えてくれるだろう。

●企業イメージの向上
「SDGs」に取り組む企業は、クリーンなイメージを持たれやすく信頼性も高まりやすい。社会にある課題や環境問題を見て見ぬふりせず、自社で行える対策を具体的に打ち出し実行している企業というイメージも持たれるようになる。またSDGsは国際目標であることから、海外からの評価も高まるだろう。

●採用ブランディングの向上
 企業イメージの向上は採用にも役立つ。「SDGs」への積極的な取り組みを通じて、学生たちに自社の存在を知ってもらえるかもしれない。

 先進的な取り組みを行う企業は、優秀な人材、若い人材の興味・関心を引きやすい。公正で平等な雇用と昇進、あらゆる差別のない労働環境、ジェンダーへの平等に取り組む企業には、多様な個性と能力を持つ人材が集まるだろう。

SDGsへの取り組みによって、企業成長にも欠かせない多様な人材を採用できるチャンスが高まるのだ。

●従業員のモチベーションの向上
「SDGs」への取り組みを通して、従業員は知識やスキルを身につけ働きがいを得られる。企業価値の向上、ブランド力の向上によって、その会社で働く喜びも感じることができるだろう。また、SDGsを達成するために自社で何ができるのかを社員それぞれが考え、話し合うことで従業員同士の一体感も得られる。

「SDGs」に取り組むうえで直面する課題とは

「SDGs」に取り組む際、企業はこれまでにない課題と向き合うことになる。今まで放置していた課題が噴出することもあるだろう。

●従業員への負担
「SDGs」への取り組みを強化することで、従業員の業務にこれまでにない負荷がかかってしまうことがある。自社での取り組みを明文化するために会議を行い、書類を作ったり、始めた取り組みが実を結んでいるのか定期的に振り返ったりなど、業務以外の部分に時間を割かなければならなくなる。

 働き方改革によって労働時間の軽減を求められている中で、SDGsに関する取り組みが長時間労働につながることだけは避けたい。

●コスト増
「SDGs」への取り組み自体にコストが発生することもある。例えば健康経営に関する施策として「スポーツジムの利用料の補助」を行った場合、社員一人当たり数千円のコスト増が発生する。

 コストが増えすぎて経営を圧迫するのでは本末転倒となってしまう点は覚えておきたい。企業側はどこまでSDGsに関するコストを許容できるのか、ある程度定めて周知しておく必要があるだろう。

●モチベーションの低下
「SDGs」への取り組みについて経営陣が一方的に決定し、従業員に負担をかけているケースも考えられる。このような状況では、従業員のモチベーションが低下する事態になりかねない。社会貢献や環境課題への取り組みが押し付けにならないよう、また従業員の業務負担増につながらないよう気を付ける必要がある。

「SDGs」の企業事例を紹介

 最後に、SDGsに取り組む企業の事例を紹介する。

●パナソニック
 パナソニックでは、人権の尊重を基本として、性別、年齢、人種、信条、宗教、障がい等によって差別することがないコミュニティづくりに力を入れている。多様な働き方にも対応するとともに、サプライチェーンにおける人権や労働問題に関しても製造・調達部門を中心に取り組んでいる。

 同社は人材育成やダイバーシティ&インクルージョンなど人権の尊重に関する課題への取り組みを通してSDGsの達成に貢献していきたい考えだという。

●シャボン玉グループ
「シャボン玉せっけん」でおなじみのシャボン玉グループでは、「健康な体ときれいな水を守る」を理念に、SDGsの17の目標すべてに関する取り組みを行っている。

 自社の製品による環境改善への貢献はもとより、生態系保全活動や災害・衛生教育・子育て支援活動、そして働きやすい環境づくりにも取り組んでいる。

 2019年6月には、女性監督職クラス以上の比率を5%引き上げることを目標にした「女性大活躍推進宣言」を行った。また、全社全域における禁煙の実施、リフレッシュ休暇制度の創設、安全衛生委員会の創立等、従業員の健康を心と身体の両面から守る取り組みも行っている。

 2030年までの達成を目指した国際目標、「SDGs」は、政府や自治体だけでなく各企業、各個人が意識して取り組む必要がある。これまで、経済成長のために人類はさまざまなものを犠牲にしてきた。時にそれは同じ人類にも牙をむき、不平等や貧富の差、差別といった形で世界社会に大きな影を落としている。「誰一人取り残さない世界」を実現するために、企業は自社にできることからSDGsを始めてみるのがいいだろう。その取り組みが自社の価値やブランド力を向上させ、ひいては優秀な人材の獲得につながるはずだ。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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