「VUCA」の時代に必要なマネジメント、リーダーシップとは

「VUCA」の時代に必要なマネジメント、リーダーシップとはどのようなものなのだろうか。

●ビジョンを明確に設定する
 不確定要素が多い「VUCA」時代には、明確なビジョンが必要だ。企業が今後歩みたい道を提示することで、従業員それぞれが自分の職務を認識し自発的に行動できるようになる。従業員一人ひとりが自律しながらビジョンに向かってともに行動することで、活発なコミュニケーション下で新規事業の創出が促進されるだろう。

●新たな情報を積極的にインプットする
 これまでの成功事例をもとに事業を進めることが困難な「VUCA」時代では、常にアンテナを張り新たな情報を積極的にインプットする必要がある。従来通りのやり方に固執せず、新たな情報を得て分析し、自社のプロジェクトに活かそう。

 自社の周辺のみならず、国内外に広く視野を持ち、最新のビジネスモデルやIT技術、諸外国の政治情勢などあらゆる角度から日々新たな情報をインプットしよう。

●情報収集とステレオタイプの排除
 新たな情報を収集するツールは複数利用し、偏りのない情報を取得する必要がある。また、収集した情報をうのみにするのではなく、ソースを確認し事実を受け入れよう。

 一つの情報だけを見てそれに凝り固まってしまうと、正しい判断が難しくなることがある。情報をもとに未来を予測し対策を立てたとき、間違った情報が入り込むことで誤った判断をしてしまうかもしれない。

 また、世間が「正しい」としている固定観念は一度取り去り、新鮮味のある情報に触れるようにしたい。

●メンバーに対する動機付け
 従来のリーダーに求められていた一方的な指導や教育は、「VUCA」時代にマッチしない。これからのリーダーやマネージャーには、メンバーと同等の目線を持ち対話できる能力が求められる。

 多様性を求めて人材を採用したのにもかかわらず、相手を理解せず一方的に押し付けるだけでは、人材の良さを引き出し活かすことはできないだろう。ビジョンの実現を目指して共に進む仲間として、それぞれの特徴を理解し意見に耳を傾けながらメンバーの力を引き出す能力がリーダーに備わっていれば、プロジェクトも円滑に進むに違いない。またそこから新規事業のヒントが見つかる可能性もある。

●決断力と行動力を意識する
 短期間で変わる状況に対応できる「決断力」と「行動力」も必要だ。未踏の課題に対峙したとき、うろたえるのではなく状況を理解し課題の解決策を探り実行する、強いリーダーシップが「VUCA」の時代には求められている。

 素早く決断し行動するために、周囲の協力も欠かせない。リーダーだからと自分一人で解決しようとせず、課題に適した人材を見極め、場合によってはその人材に権限を委譲するといった判断力も必要だ。

●選択と集中
 これまで誰も経験したことがない課題やプロジェクトにあたるとき、強い集中力を持って「何としてでもやり遂げる」力がリーダーに備わっているかどうかで結果が変わってくる。

 暗中模索が続く中で、「何が正しいのか」は、実際のところ誰にもわからない。さまざまな情報によって未来を予測したとき、見える道は複数ある。数ある選択肢から選んだ道の途中、「もしかするとこれは間違いかもしれない」と不安がよぎっても、一定期間はその選択に集中する力がリーダーには必要なのだ。

「VUCA」の時代では、従業員個々にどのようなスキルが求められる?

「VUCA」の時代、これまでとは異なる能力が求められる。これは従業員一人ひとりに対しても同様だ。これからの人材が有すべき能力について見ていこう。

●迅速な意思決定
 新たなビジネス、新たなニーズが次々と生まれ消える「VUCA」の時代、意思決定の遅れが大きなビジネスチャンスを逃す事態を招くことがある。迅速な意思決定を求められるのは、経営陣やリーダーだけではない。従業員にも迅速な対応が求められ、各自が最新の情報を取得し活用する意識を持たなければならない。

●変化に対する臨機応変さ
「VUCA」時代には柔軟性が求められる。これまでの成功事例にとらわれず、柔軟な思考を持ち臨機応変に行動できる人材が必要なのだ。変化を恐れず立ち向かい、思わぬトラブルが起きたときにその対応策をすぐに考え実行できる人材づくりを意識しよう。

●多様性を受容するコミュニケーションスキル
 多様な人材を採用したとき、従業員同士で摩擦が起きてしまうのではイノベーションは生まれない。それぞれの能力をのびのびと発揮できるよう、コミュニケーション研修を人材育成制度に取り入れるといいだろう。

●的確な問題解決力
 長年勤務している上司であっても、明確な答えを持って行動できないのが「VUCA」時代だ。課題に対する明確な解決策を誰もが持ちえない中、従業員は次々に現れる課題の本質を見極め、解決する方法を提案することになるだろう。

 取得した情報を精査し仮説を立てアプローチできる人材が増えれば、より早く課題を解決できる組織となるだろう。

 2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中が答えを知らない問題と向き合うこととなった。既存のビジネスが立ちいかなくなり、方向転換を強いられた企業もあるだろう。かねてより「VUCA」時代に対応する組織づくりをしてきた企業は多くない。持続的に成長する企業を目指すのなら、VUCA時代に対応する人材を育成し、組織体制を強化する必要がある。人材マネジメントを経営戦略の主軸に置き、人事制度や人材育成体制の見直しを検討したい。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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