2020年はコロナ禍と、それにともなう緊急事態宣言によって「テレワーク」が一般化した。慣れないうちは戸惑いつつも、「案ずるより産むがやすし」という考えで導入してみたところ、「意外といけるじゃないか」と多くの働き手、経営者が感じたのではないだろうか。では、「テレワーク」という勤務態勢が広まった今、「今後の働き方」はどのように変わっていくのかを考えてみよう。

「テレワーク」は主流となるか

「テレワーク」は、通勤時のラッシュ地獄を避けられるし、時間の節約にもなる。職場での無駄と思われるような電話や会話も減り、仕事に集中できて効率性・生産性が上がる。このように実感した人も多いだろう。何より、苦手な相手と直接コミュニケーションを取らなければならない機会が減らせて、ストレス軽減効果がある、と感じている人もいるのではないだろうか。

 しかし、それも一定期間継続すると、だんだんと「不便な面」が見えてくる。まず、さまざまなオンライン会議システムがあるため、取引先企業との間で、自分が慣れていないシステムを使わざるを得ない場合があり、勝手がわからないことがある。また、回線の不具合で声が割れたり、映像が止まったりと使いづらい。だが、そうしたテクニカルな問題は、ある程度慣れてしまえば解消するのでそう深刻な問題ではないだろう。

 より大きな問題は、「コミュニケーションが滞る」ことだ。傍らに上司や同僚がいないので、対面であれば、ちょっと声をかければ確認できるようなことも、いちいち電話やメールで連絡しなければならない。これが結構なタイムロスになる。そして、会話であればスムーズに事が運ぶものも、文字のやり取りでは、「何となく意図が伝わらない」と思うケースが往々にしてある。メールが返ってこなければ、「相手が気分を害しているのではないか?」と邪推してしまう経験が、誰しもあるはず。なまじ経験があるだけに厄介なのだ。

 Beforeコロナの職場では、普段の何気ない会話からさまざまなアイデアが生まれていたものだ。やはり、創造的なアイデアは、職場でいろいろな部署の、多様な人間同士が交流することで生じるもので、実体験からもそういえる。隣に同僚がいれば、「こんなアイデアを考えたのだけど、どう思う?」と、気軽に聞けていたのに、今はそれができない。Beforeコロナの職場でさえ「コミュニケーション不足」が指摘されていたのに、ますます意思疎通をはかることが難しくなってしまっているのだ。

 私見では、「このテレワークという働き方は、実は企業の中長期的な生産性向上には向かないのではないか?」と思い始めている。現に、さまざまな企業が、職場の「心理的安全性」を高める必要性を訴えているのも、そのような根源的な疑問からくるものかもしれない。もちろん、ひとりきりで集中した方が、生産性が高まる仕事はある。しかし、何か新しいものを生み出そうという時には、人と人とのインタラクションが必要不可欠なのではないだろうか。そういった意味で、Afterコロナの社会では「テレワーク」だけが主流ではなく、生(なま)のやり取りができる出社勤務とのハイブリッドな働き方とならなければ、禍根を残すことになりそうだ。