SSCがさらなる高度化をとげる余地
A社の事例でもご紹介したように、SSCは業務改革を実行する組織であるべきです。しかしこれまでの主流であった業務改革に主眼を置いたSSCだけでなく、「経営・事業への貢献」をビジョン・ミッションとしてSSC強化を目指す取り組みも始まりつつあります。SSCにはさまざまな業務をEnd To Endで執行することで、様々なデータが蓄積されます。特に人事業務を通して蓄積される人材に関連するデータは宝の山である一方、十分に使いこなせていないのが実情でしょう。
例えば、ハイパフォーマー分析による共通要素の抽出・育成要件の検討や、採用時の最適チャネルの識別と候補者のパフォーマンスの見通し、社員エンゲージメントへの影響因子・打つべき人事施策の検討など、蓄積されたデータを活用して経営・事業に新しい提言を行うこと、そして企業に貢献することが、人事に期待される大きな役割です。SSCこそがそのデータの源となります。
SSCに人材データ分析機能を具備することにより、効率的にインサイトを抽出することが可能となり、人的側面から経営・事業に貢献していくことができるでしょう。これまでは一般的に「シェアードサービスセンター」と呼ばれてきましたが、今後は「ビジネスサービスセンター」として強化・高度化に取り組んでいくことが必要であると考えています。
これまでの歴史的背景もある中で、一足飛びにSSCの位置づけを変えていくには大きなハードルがたちはだかることと思いますが、SSCを含めた人事全体の組織・機能配置を最適化し、新たな人事機能を確立することこそが、SSCのさらなる高度化へつながるでしょう。
著者プロフィール EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 外資系コンサルティングファームを経て、現職。組織/人事・人材コンサルティングにおいて20年以上の経験を有する。特に人事業務BPR、シェアード・BPOに関する分野では、製造業、小売業、製薬業、サービス業など業界を問わずさまざまなクライアントに対し、構想策定から導入・定着フォローアップまで幅広いプロジェクトをリードしてきた経験を有する。 |