この間の利得について、遡及的に新電力・消費者への還元がなされるべきだ。これは、負担配分の適正化の議論であり、「新電力がかわいそうだから救済」という話ではない。市場の機能停止を招いた政府の責任で大手電力を説得すべきだ。

電力自由化は間違っていたのか?

 今回の事態を受け、「電力自由化はやはり間違っていた」との言説も目にする。しかし、すでに述べたように、異常事態の根源は、自由化に伴う「市場設計の欠陥」だ。電力自由化が間違っていたのでなく、自由化の改良が課題だ。

 ただ、そうは言っても、現実にはこの先、自由化は大きく逆行する可能性が否めない。このままなら新電力の多くは近いうちに撤退を迫られる。経営危機は回避できても、こんな危うい市場でビジネスを継続できないと判断する経営者も多いだろう。

 行き着く先は、かつての垂直統合・地域独占体制への回帰だ。競争と参入なき産業に進化はない。そんな状態に戻れば、日本のエネルギー産業の進化は停滞する。かつての体制は火力・原子力など大型電源に適合した体制だから、周回遅れの再エネ拡大はさらに遅れる。世界で「再エネ電力利用」を調達基準とする企業が拡大する中で、エネルギー後進国の日本から企業が逃げ出す事態にもなりかねない。「2050年カーボンニュートラル」を悠長に論じている場合ではなく、危機は目前に迫っている。

 自由化の逆行を食い止めるには、電力市場への信頼を一刻も早く回復するしかない。「緊急提言」で示した「市場設計の欠陥」解消に向けて、ここ数週間で道筋をつけられるかどうか。

 電力業界だけの問題ではなく、日本の未来を大きく左右する重大局面にいま差し掛かっている。