(羽田真代:在韓ビジネスライター)
韓国メディアのSBSが1月28日に報じた 「韓国政府による北朝鮮原発建設の推進問題」で、韓国世論が荒れている。第一報が報じられてから、連日、メディアで取り上げられており、新型コロナの感染拡大を抑えるため5人以上の私的会合が禁止されているにも関わらず、デモまで行われている。
そして、この「北朝鮮原発建設」の推進問題を、早速政治に利用しはじめた人物がいる。故・金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の次男で金泳三民主センター常任理事を務める金賢哲(キム・ヒョンチョル)氏だ。
もっとも、「反日」の文在寅大統領の批判を繰り返している金賢哲氏をまともな人物と捉える向きもあるようだが、彼もまたくせ者である。そして、金賢哲氏の言動が日本にとって追い風になるか、向かい風になるかも慎重に検討する必要がある。
金賢哲氏は自身のTwitter上で、「反国家行為を行っている文在寅徒党を一日でも早く引きずり下ろして罪状を一つ一つ明らかにし、必ずその罰を受けさせなければならない」と主張している。また、「泥棒は自分の足がしびれる」という韓国のことわざ(「後ろ暗ければ尻餅つく」の意)を引用し、「状況をさらに悪化させる格好になるだろう」と警告した。
至極当然の意見だが、 金賢哲氏には逮捕歴がある。
1回目は父親の金泳三氏が大統領だった1997年5月のこと。国政運営及び人事権介入による斡旋収賄と脱税で逮捕、拘束され、金大中政権下の1999年8月に大統領特別赦免で釈放された。
2回目は2004年で、不法政治資金を受け取った疑いで再び逮捕された。その際には懲役1年、執行猶予2年、追徴金5億ウォンの支払いを命じる判決が下された。
金賢哲氏は当時、検察の捜査中に嘘がばれるのではないかという心配から自殺騒動を起こした。傷の深さは1センチから0.3センチ程度で、死亡するには至らなかったが、父親である金泳三氏がこの知らせを聞いて「情けないと思った」という話は有名だ。当時、メディアから「傷浅く本人もきまり悪い」と報道される始末だった。
金賢哲氏は文在寅大統領に対し「必ず罰を受けさせなければならない」と発言しているが、2019年に与党「共に民主党」を離党した彼は、前回の第19代大統領選挙で文在寅候補を支持した人物の一人である。自身の過去を棚に上げ、どの口が言っているのかと呆れてしまう。