AIでさまざまな作業を自動化し、より高度な仕事が生まれ人間に要求されるスキルも高くなります。その中で日本式の丁稚奉公が、世界でいま見直されている――そう指摘するのは、元国連職員でイギリス在住の谷本真由美氏だ。

テレワーク先進国の実態

 日本では新型コロナの感染者数が増えたため、テレワークや在宅勤務がグッと増えました。

 しかしながらアメリカや欧州では、もう20年以上前から導入している企業も少なくありません。その理由は、就労環境を自由に選択できるよう多様的に整えたほうが従業員の生産性が上がるからです。

 特に知識産業ではスキルがある人の取り合いになっているので、多様性かつ柔軟性のある快適な就労環境を用意することは良い人材を獲得するためにも必須です。

 シリコンバレーの大手企業に就職した私の大学院の同級生は、1999年に就職した初日から在宅勤務です。上司も同僚も、誰も会社に来ないのです。

 別の日本人の友人は、アメリカ系の外資系企業に勤務していますが、やはり新卒で就職した当初からテレワークでの就労方式です。上司や同僚は世界各地にいるため、何年も顔を合わせることがありませんでした。

 このように、ずいぶん前からテレワークが進んでいるというイメージの強いアメリカですが、調査会社のピュー研究所が2019年に実施した調査によれば、現在、テレワークの制度を設けている民間企業は全体のたった7%です。つまり、テレワークできる企業はマイノリティなのです。

 なぜ、テレワーク先進国であるアメリカで、すでに多くの企業が「テレワーク離れ」をしているのでしょうか。これについてはさまざまな意見がありますが、テレワークは個人で自己完結する仕事には向いているけれど、他者と協調しつつチームで働く業務に向いていないからだという説が目立ちます。