どのような組織にも「積極的に自己啓発に取り組む社員」と「自己啓発を全く行なわない社員」が存在する。なぜ、このような現象が発生するのだろうか。今回は、自己啓発に「取り組める人材」と「取り組めない人材」の相違点について考えてみよう。
7割の労働者は「自己啓発をしていない」
令和2年5月26日に厚生労働省が発表した「令和元年度能力開発基本調査」の調査結果によると、平成30年度の1年間に自己啓発を行なった労働者の割合は29.8%であり、10人中3人程度の労働者が自己啓発を行なったということになる。また、自己啓発の実施状況を契約形態別に見ると、正社員の39.2%が自己啓発を行なったのに対して正社員以外は13.2%、男女別に見ると、男性の35.8%が自己啓発を行なったのに対して女性は23.4%という結果になった。
以上、この調査結果は、「自己啓発を行なう人材」よりも「自己啓発を行なわない人材」の方が圧倒的に多いという事実を示している。
また、同調査で自己啓発を行なった労働者に対し、その理由を尋ねたところ「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」、「将来の仕事やキャリアアップに備えて」などの回答が上位となった。
それでは、自己啓発を行なわなかった7割の労働者には、自己啓発によって仕事上の知識・能力を身に付ける必要性や機会などは存在しなかったのか。決してそのようなことはないはずだが、なぜ7割もの労働者が自己啓発を行なわなかったのだろうか。
自己啓発の有無は「生活習慣」の違いに起因する
自己啓発を行なわない理由として、一般的に聞かれるものに「必要性がない」、「時間がない」などがある。しかし前述のとおり、自己啓発によって仕事上の知識・能力を身に付ける必要性などは、職業人であれば誰にでもあるものであろう。また、種々の事情があるにしても、自己啓発のために使える時間が1日のうちに「全く存在しない」という生活環境は、極めて考えにくい。
以上を鑑みると、自己啓発を行なわない理由として「必要性がない」、「時間がない」などと回答することに、大きな違和感を覚える。恐らくは「必要性がない」は、「自己啓発の必要性は存在するが、それに気付いていない」というのが実態ではないだろうか。また「時間がない」は、「自己啓発に充てる時間がないわけではないが、実行に移せていない」という状態だと推察できる。つまり、一部の特殊なケースを除けば、多かれ少なかれ誰にでも自己啓発の必要性は存在し、それを行なう時間も存在するといえよう。
それでも自己啓発を行なえない大きな理由のひとつに、そのような生活習慣が身に付いていないことがあると考えられるだろう。具体的には、日々における自身の生活習慣の中に「学ぶ習慣」が存在しないため、自己啓発の必要性に気付けず、気付いても実行に移せないのだ。