中国・深圳にある巨大電子街「華強北」の入口にあるオブジェ(以下、写真はFind Asia提供)

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

 中国・深圳にある巨大電子街「華強北(フアチャンベイ)」は、豊富な電子部品や蓄積されたネットワークで中国イノベーションを支える中心地です。「中国の秋葉原」と形容されることもあります。

 しかしご存じのように、日本の秋葉原は「電気・電子の街」から「アイドル・サブカルチャーの街」へと変貌を遂げています。同様に、中国の「華強北」にも大きな変化が訪れています。変化の速さと進化の多様性で知られる中国イノベーションの象徴はどこに向かうのか? 最新の情報をお伝えします。

「電子産業の中心地」を支えた“山寨”

 1970年代後半、市場経済化を始めた中国では、外資導入に伴い工場や産業開発区が誕生していきました。80年代に中国経済が近代化する中で、電子部品や関連機器を製造する工業地区として華強北は誕生しました。

 ところが90年代には、大規模製造拠点地域としての優位性がなくなり、電子産業の工場が広東省の周辺地域に移転してしまいました。このため、賽格電子などの企業が中心となって、電子製品や電子部品の販売集積地、さらに家電販売店が集まる地域として生まれ変わりました。

「賽格広場」にある賽格電子大型ビルは華強北のランドマークとなっている

 1990年代から2000年代には、華強北は電子産業の集積地として急速に成長しました。「深圳商報」などの資料によると、当地で活動する企業は倍々の勢いで増加し、10年間で店舗スペースの家賃も10倍になりました。

 この成長を支えたのは「山寨」、つまりコピーブランドや非正規品です。山寨の携帯電話や電子部品が、深圳周辺の工業地域から流れ込み、華強北は中国国内で注目を浴びるようになったのです。