EY連載:大変革時代における組織・人事マネジメントの新潮流(第24回)
新型コロナ禍のリカバリーに向けてあらためて加速するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するには、既存の人材とは異なるスキルセットを持つ、いわゆる「デジタルタレント」が求められます。一方で、そうした人材の不足が、DXにおける大きな阻害要因となっています。本稿では、デジタルタレントの充足に向けた「はじめの一歩」として、DXの全体像を見据えながら、求められる人材の要件をひもとき、整理していくための考え方を解説します。
自社DXに必要なデジタルタレントの類型化とプロファイリング
新型コロナウイルス感染症収束への道筋はまだ先が見通せない状況ですが、多くの企業ではリカバリーに向けた動きを活発化させています。とりわけ、デジタルトランスフォーメーション(DX)に今こそ本腰を入れるという企業が増えてきているようです。
一方で、近頃、「DXを推進したいのだが、担当できる人材が社内にいない」、「社員にデジタルスキルを身につけさせたいが、何から始めたらよいのかわからない」といった声をよく聞きます。詳しく話を聞いてみると、「DXの推進には既存の人材とは異なるスキルセットを持つ人材が必要である」という認識は一致しているのですが、そもそもどのような人材が必要なのかを明確にできていないケースが大半です。
既存の人材とは異なるスキルセットを持つ人材、つまり「デジタルタレント」を社内で育成するにせよ、社外から獲得するにせよ、人材要件の設定がスタート地点になります。そして人材要件とは、「何をやるのか(目的)」に即して設定する必要があるでしょう。そのうえで、要員計画を作り、人材充足に向けて、具体的な打ち手を順次実行していくことになります(図表1)。
「DX」と一口にいっても、企業により捉え方や取り組み方はさまざまですが、「デジタルをテコにして新たな事業を立ち上げて収益の柱にしていきたいケース」と、「AIやオートメーションにより業務の効率化を圧倒的に高めたいケース」に大別されます。まずは「自社DXにおいて何を目指すのか」を確認します。いずれのケースにおいても、求められる人材は、ある特定のスキルを持つ単一の人材像ではなく、さまざまな人材の組み合わせとなります。ですから、やみくもに人材像を定義し始めるのではなく、まずは類型化から始めるのが良いでしょう。