米連邦議会議事堂になだれ込むデモ隊(写真:ZUMA Press/アフロ)

 1月6日、米議会で上下両院合同会議が開催された。本来であれば、選挙人投票に従って次期大統領を選出する場だが、トランプ大統領を支持する人々が連邦議会に乱入。支持者の女性一人が死亡するなど、首都ワシントンは大混乱に陥った。そして7日には、トランプ罷免や弾劾の話が民主党、及び匿名を名乗る共和党議員から出た一方、トランプ政権の閣僚等は辞任表明を始めている。その中で、トランプ本人はテキサスに行ってしまった。

 また、前日の1月5日にはジョージア州の2議席を巡って上院選の決選投票が行われ、民主党が2議席を獲得することになった。民主党の獲得議席数は50議席(上院の定数は100)で両党同数だが、上院の議長を務める副大統領を民主党が抑えたため、事実上の過半数を獲得した格好だ。

 次期大統領選出を巡る未曾有の混乱とジョージア上院選の結果、トランプ大統領やトランプ支持者の動きについて、全国共和党委員会の選挙管理ボードのメンバーでもある酒井吉廣氏に聞いた。

──1月6日に開催された上下両院合同会議は未曾有の大混乱に陥りました。なぜこのような事態になったのでしょうか。

酒井吉廣氏(以下、酒井):まず、大統領と副大統領の行動はほめられたものではなかったですね。

 今回の混乱は、基本的には両党の政治家が国家ではなく、自分のために動いた結果だと感じています。トランプ大統領は大統領選での不正を訴え、集会を開きましたが、その後の動きを統率しようとはしませんでした。残念なことですが、無責任の誹りは免れません。

 ペンス副大統領も、選挙結果を覆すかどうかについて、自身の憲法解釈でそれは無理だと宣言しましたが、もし大統領の訴える不正がないと思うなら、不正が「ない」から行動しない、不正があるなら憲法解釈を示すのではなく行動に出る、というのが筋だったと思います。第一、副大統領が行動に出たとしても、大きな議論は巻き起こったでしょうが、6日の合同会議冒頭でバイデン候補の票が直ちに無効になるわけではなかったのですから。

 そもそも、今回の混乱はペンス副大統領の不用意な発言が招いたものですから、彼が「俺に任せろ」と言って議事堂の前に立って聴衆に呼びかけるべきだった。メディア経由でも良かったと思います。ペロシ議長でも良かったですが、いずれにしても残念ですね。

 彼らは誰のために行動していたのでしょうか。

上下両院合同会議でバイデン候補の勝利は確定した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

──民主党側や、議員全体についてはどうですか。

酒井:クルーズ上院議員が、上院、下院、最高裁から各5人の緊急調査委員会を作って、10日間で不正の有無を確認することを提案したのですから、それを議論するべきでした。「不正がある」「ない」と言い合っていても埒が明かないからです。でも、これが成立せず、米国は分断を解消する術を一つ失いました。不正があったかどうかは今後も尾を引くでしょう。

 民主党側についても、ペロシ下院議長からは論戦をするという気概が感じられませんでした。また、共和党議員も民主党議員も同じですが、「リンカーン大統領は・・・」「独立の時は・・・」「子供たちが何を学ぶか・・・」などという教訓論めいた議論を繰り返すばかりで、議題となっている点に触れたのはわずかでした。この無力さというか、第三者的な雰囲気が、米国の分断を解消できない原因でしょう。

──ワシントンに集まったトランプ支持者は20日の大統領就任式の会場を占拠、議会に乱入しました。議会は厳重に警備されているはずですが、なぜ議事堂の中に侵入できたのでしょうか。

酒井:今回の議事堂への乱入は、米ウォールストリート・ジャーナルが1月6日朝刊に掲載した、1887年の議事堂の周りを取り囲む写真と同じ構図になりましたね。意味深です。

 誰が6日の乱入を煽ったのか、つまりホワイトハウスのデモ隊を誰が議事堂に先導したのか、疑問を感じるところです。トランプ演説を聞いていた人たちは、演説後はただ歩いていただけです。一方、議事堂の周囲には警戒態勢が敷かれておらず、警官が本気で動き始めたように感じたのは議事堂の2階に上る人が増えてからです。そもそも、議事堂前のバリケードをよけた人の中に警官がいましたし、議事堂のドアに行く前の階段のところでデモ隊を止めるべきでしたが、その時は逃げていました。窓を割る映像も出ていますが、ほとんどの人はそこからは入っていません。中からドアを開ける人がいたのでしょう。

──警備員が開けたのですか。