年次改良されたマツダ「CX-5」。公道試乗会の拠点となったマツダR&D横浜(横浜市神奈川区)にて(筆者撮影、以下同)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 マツダはこれから先、大丈夫なのか──? 自動車関連メディアを中心に最近そうした報道をよく目にする。特に、「マツダのディーゼル車は生き残っていけるのか」という声がよく聞かれる。

政府のグリーン成長戦略の中で募る不安

 心配の背景にあるのは、菅政権が推進する2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)に向けたグリーン成長戦略の影響だ。

 カーボンニュートラルとは、地球温暖化に影響を及ぼす各産業からのCO2排出量と、自然界などでのCO2吸収量を実質的に相殺するという考え方である。

 政府が2020年12月25日にまとめたグリーン成長戦略の基本案では、各産業部門のCO2排出量の割合について電力由来が37%、産業が25%、運輸が17%、業務・家庭が10%、その他11%と説明している。運輸のうち約9割が自動車に由来し、またガソリン等の精製や自動車部品製造や自動車の最終組付けでの作業など周辺産業との関わりを鑑みると、自動車に関わるCO2排出量は他の産業と比べて多いことになる。

 世界では、自動車の本体から直接排出されるCO2を軽減するため、自動車の原動機の電動化を推進する国や地域が増えている。

 例えば欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)は、自動車のCO2排出量を規制する「欧州グリーンディール政策」を推進している。世界で最も厳しいと言われるこの規制では、2050年のカーボンニュートラルを目標とし、全メーカーの乗用車の平均CO2排出量が、2021年には95g/km、2025年には81g/kmの基準に到達することを目指す。